2023 Fiscal Year Research-status Report
血液脳関門モデルを用いた造影剤脳症の作用機序解明と治療法探求
Project/Area Number |
22K09287
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松永 裕希 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (80772136)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 慎介 福岡大学, 薬学部, 准教授 (10404211)
諸藤 陽一 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (40437869)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 造影剤脳症 / 血液脳関門 / in vitroモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)は脳の恒常性保持に重要な役割を果たしており、そのBBBの機能的な構築には基本構成単位である脳毛細血管内皮細胞、Pericyte (PC)、及びAstrocyte (AC)間のクロストークが不可欠である。造影剤は画像診断や血管内治療の分野で広く使用されており、近年治療技術、デバイスの進歩によって脳神経血管内治療が急速に浸透しつつあるが、治療に伴う合併症のひとつとして造影剤脳症が挙げられる。造影剤脳症の発生機序に不明な点が多く、この領域に関して基礎研究がなされていない現状がある。本研究はヨード造影剤Iopamidolを用いてBBBに与える影響及びその造影剤脳症の発症機序について解析を行う。近年二量体で構成されるダイマー型造影剤の使用頻度が増加傾向にあり、造影剤の種類によるBBBへの障害性の違いについて検討を行った。ラット初代培養脳内皮細胞を用いたcell viabilityの検討においてIopamidol(モノマー)群, Iodixanol(ダイマー)両群ともに内皮細胞に対して濃度依存性にcell viabilityの低下を認めるが、Iodixanol群はIopamidol群と比較してcell viabilityの低下が低かった。さらにin vitro BBBモデル(内皮細胞単層モデル)を用いてBBB障害性の検討を行ったところ、臨床使用されている濃度での造影剤短時間暴露によって一時的なBBB機能障害が起こるが、Iodixanol群はBBB機能障害性がIopamidol群と比較して低いことが示された。上記実験結果より、造影剤の種類によってBBBへの影響が異なること、またダイマー型造影剤はモノマー型造影剤と比較してBBB障害が軽減できることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳内皮細胞におけるMAP kinase経路とペリサイト、アストロサイトのクロストークが造影剤誘発性血液脳関門障害に関与し、造影剤の血管外漏出は造影剤脳症の発症要因になりうることを見出した。また造影剤の種類によってBBBへの影響が異なること、またダイマー型造影剤はモノマー型造影剤と比較してBBB障害が軽減できることを見出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、すでに一時的な血管内腔への造影剤投与はBBBへ与える影響は少ないこと、脳実質内へ造影剤が移行し存在することによってBBB機能を低下させること、またその作用機序として脳内皮細胞におけるMAP kinase pathwayやペリサイト・アストロサイトのクロストークが関与していること、造影剤の種別(低浸透圧・等浸透圧造影剤)によって障害性の差異があることを見出した。本研究をより推進させ造影剤脳症の発症機序解明やBench to bedへ活かせる結果を見出していきたいと考える。
|
Causes of Carryover |
国際学会での発表や共同研究先であるハンガリーへの渡航・共同実験が施行できなかった。また世界情勢の関係から実験試薬の調達が困難であった。次年度ハンガリーでの共同実験を予定しており、必要となる試薬購入・渡航費支出を予定している。
|