2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K09300
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺島 明日香 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (30596937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 琢 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30456107)
竹谷 英之 東京大学, 医科学研究所, 講師 (90206996) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 血友病性関節症 / 滑膜 / 関節 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に予定していた計画をほぼ順調に遂行することができた。本研究はヒト臨床検体及び動物モデルでの血友病性関節症の解析を同時に進め、比較することにより、臨床で観察される血友病性関節症特有の関節破壊機序の核心に迫りつつ動物モデルのメリットを活かし、関節内出血発生からの経時的変化をつぶさに追いかけ、血友病性関節症特異的な分子メカニズムを解明することを目的としている。そのためには、まずヒト臨床検体を出来うる限り集め解析につなげることが最重要課題でもある。本年度においては、臨床検体の提供に同意してくださった方々および研究分担者の協力のもと、滑膜切除術、人工関節置換術で発生した滑膜組織や軟骨組織、軟骨下骨組織の切除サンプルをサンプリングし、病理組織切片作製や遺伝子発現解析のためのRNAを採取することができた。一部の細胞の採取まで行えたサンプルについてはフローサイトメトリーによる細胞の解析データも集めている。現在は特徴的な組織や分類を可能にすべく、各種組織染色の検討、およびRNAーseq解析を実施中である。ヒト臨床検体の解析と並行して血友病性関節症モデルマウスの解析も進めている。マウスモデルの利点を活かし、経時的なサンプリングを行い、ヒト臨床検体と比べるために、病理組織解析等を行っている。マウス検体についてはマイクロCT解析による骨構造の解析なども進めており、関節破壊の様子も含めた掲示的な変化の観察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血友病性関節症患者の手術は変形性関節症に比べて手術件数が圧倒的に少なく集まりにくい状況ではあるのだが、研究分担者とさまざまに協議を重ね検体採取に尽力している。ヒト臨床検体組織標本を比較した結果、血友病性関節症の関節滑膜組織は大きく3つの種類に大別できるそうだということがわかった。これは単に病期の違いを示しているのか、それともそれぞれが異なる細胞が主体となっているものなのか、については組織染色各種、フローサイトメトリー解析やRNA-seq解析などの他の解析手法から得られる結果を統合しつつ、検討を進めているところである。変形性関節症は手術件数も比較的多く、検体もよく集まっており特に大きな問題はないと思われる。マウスモデルも確立しており問題はないが、血液製剤でコントロールされているヒト臨床像と比べて、非常にシビアな表現型なのでどちらかというと急性期の血友病性関節症に近い可能性があり、こちらについても検証を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ヒト臨床検体とマウスモデルを比較解析し、臨床症状で観察される所見を表している時期や組織においてどのイベントが主となっているかを見極めていく方針である。血友病性関節症特異的に観察される表現型にフォーカスして分子レベルでのメカニズム解明を目指していく。現在のところの課題は、滑膜除去サンプルの回収が難しいところにある。滑膜除去サンプルについては血友病性関節症疾患が非常にアクティブになっている滑膜が多いと思われぜひ解析を進めたい検体でもあるが、手術方法などの制限などからなかなか検体を回収しづらい組織となっている。執刀医とも議論を重ねており患者の負担とならず、かつ、効率的に除去サンプルを回収できるような工夫を考えている。また、RNAはたまに回収率や品質が低かったりして解析につながらないものもあった。手術室から実験室までの輸送方法やその後の処理について最適化する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していた血友病性関節症のヒト臨床検体の解析に使用予定であったが、手術件数が想像より伸びていなかったこともあり、解析費用が当初の予定より下回ったことが原因である。これに関しては引き続き研究分担者との連携により提供者を募っているので、次年度以降にサンプリングできたヒト臨床検体の解析費用に使用する予定である。
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