2023 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー代謝における思春期特発性側弯症関連遺伝子LBX1の機能解析
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22K09320
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
北村 和也 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 整形外科, 講師 (00383860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀内 圭輔 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 整形外科学, 教授 (30327564)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 思春期特発性側弯症 / LBX1 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
思春期特発性側弯症では胸郭変形や胸腰椎の変形・変性が進み大きな障害を来たしうる.成長期終了以前に進行した症例に対してはインプラントによる矯正手術が適応となるが,手術は侵襲が大きく,合併症も無視できないことから,より有効な治療法・予防法の確立が強く望まれる.申請者の研究グループでは,思春期特発性側弯症発症に関連した一塩基多型を同定し,その近傍にLBX1遺伝子が存在することを過去に報告しており,継続して機能解析を行っている.これまでの研究から,骨格筋特異的にLBX1の発現を抑制した遺伝子改変マウス(以下Lbx1Δmusマウス)では,野生型マウスに比較し,前肢の低形成,加齢に伴う後弯変形,低体重などの表現型を示すことを明らかにし,論文報告した(Y. Matsuhashi. J Orthop Res. 2023 41(4):884-890).本研究計画ではLbx1Δmusマウスが低体重であるという表現型に注目し,骨格筋に発現するLBX1のエネルギー代謝における機能の解析を試みた.これまでの研究から,Lbx1Δmusマウスは野生型マウスに比較して,摂食量自体には差を認めなく,運動量自体も低下しているのにもかかわらず,肥満抵抗性であり,基礎代謝が亢進しいていることを明らかにした.組織学的に骨格筋には異常を認めないが,脂肪細胞径が小さく,脂肪組織重量も野生型マウスに比較して有意に低下していることが観察された.また,Lbx1Δmusマウスの骨格筋の網羅的な遺伝子発現解析から,エネルギー代謝に関わる複数の遺伝子を同定した.マウス線維芽細胞NIH3T3細胞にLBX1を強制発現させたところ,LBX1を発現した細胞は対象の細胞に比較してエネルギー代謝が低下することが確認された.さらに前述の遺伝子の発現を解析したところ,Lbx1Δmusマウスの骨格筋とは逆の発現様式を示すことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・これまでのところ,Lbx1Δmusマウスの表現型解析は順調に進行しており,Lbx1Δmusは餌食の消費量が野生型マウスと比較して変化がなく,活動性自体は低下しているものの,野生型マウスと比較して低体重であることを確認している.さらに,高カロリー餌食による肥満誘導に対して抵抗性を示すこと,ブドウ糖負荷試験にて糖負荷抵抗性を有すること,トレッドミルによる最大酸素摂取量は亢進していること,基礎代謝の亢進を示すこと,を明らかにしている.このことから,LBX1のvivoにおける機能解析に関しては,計画通りに進行していると考えられる. ・LBX1の標的分子の同定と,糖負荷抵抗性に対するメカニズムの解明のため,Lbx1Δmusマウスの骨格筋の網羅的な遺伝子発現解析を行い,エネルギー代謝に関わる複数の候補遺伝子を同定した.これらの遺伝子がLBX1の制御を受けているかの検証を行うため,まずは各種細胞株におけるLBX1の発現量を検討したが,LBX1を高発現する細胞株が同定できなかった.このため,LBX1の発現ベクターを作成し,強制発現の実験系を確立した.LBX1を強制発現させた細胞ではエネルギー代謝が低下することを観察しており,LBX1はエネルギー代謝を負に制御するというin vivoでの所見の検証がなされた.一方,LBX1の標的遺伝子と考えられる遺伝子は複数候補が挙がっているものの,細胞レベルでLBX1がエネルギー代謝を制御するメカニズムの解明には至っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
Lbx1Δmusマウスの表現型解析は極めて順調に進んでおりN数も十分に確保ができている.このことから,「骨格筋に発現するLBX1はエネルギー代謝に対し抑制的に機能する」という本研究の仮説はほぼ裏付けられたと考える.一方,in vitroの実験系では,LBX1を有意な強度で発現する細胞株がないため,ややその解析が阻まれている.上記のごとくLBX1の強制発現の系を確立し,ある程度の検証がなされたが,Lbx1ΔmusマウスがLBX1のloss-of-functionの系である一方,細胞の実験がgain-of-functionという整合性の問題もあり,LBX1の細胞レベルでの機能解析にやや難渋している.現在,LBX1を強制発現させた細胞株の遺伝子発現様式の変化を網羅的に解析し,あらためてLBX1の下流遺伝子・シグナルの解明を試みている状態である.今後はこのin vitroの解析を進めるとともに,これまで蓄積したデータをもとに論文化を今年度中に行う予定である.
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Causes of Carryover |
実験自体はほぼ予定通りの進捗であったが,当初本研究費での支払いを予定していた遺伝子網的解析(RNA seq)が事務的な問題から他の予算から支払われたこと,また諸般の事情で参加を予定していた学会に不参加であったことなどから次年度使用が生じた.
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