2022 Fiscal Year Research-status Report
力学的ストレスに対する分子応答の遮断による腰部脊柱管狭窄症の新規治療法の開発
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22K09340
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
中村 博亮 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 教授 (60227931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 亨暢 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 講師 (00445016)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腰部脊柱管狭窄症 / 黄色靭帯 / Periostin |
Outline of Annual Research Achievements |
腰部脊柱管狭窄症は高齢者の歩行障害の原因として頻度の高い疾患であり、黄色靭帯肥厚が狭窄の主原因である。力学負荷が黄色靭帯肥厚の要因とされるが、分子メカニズムは未だ解明されていない。我々は黄色靭帯肥厚動物モデルを用いて、力学負荷により黄色靭帯内で増加する分子の1つとしてPeriostinを同定した。Periostinは様々な臓器における線維化・炎症性疾患への関与が報告されており、黄色靭帯肥厚にも関与している可能性がある分子である。本研究の目的はPeriostinの発現や機能解析をヒト黄色靭帯組織および初代培養細胞を用いて行い、さらにPeriostinシグナルを遮断する薬物療法の効果を黄色靭帯肥厚動物モデルにて検証する事である。 まず腰部脊柱管狭窄症症例の肥厚黄色靭帯と他の疾患を有する患者の非肥厚黄色靭帯を用いて、Periostinやその受容体であるIntegrin αvβ3/αvβ5の発現をqPCRにより確認した所、いずれも肥厚黄色靭帯において有意に発現が増加していた。さらにPeriostinのmRNA発現量は黄色靭帯の厚さと有意に相関していた。次に細胞への力学負荷の影響を評価するために黄色靭帯細胞の初代培養を行い、力学負荷としてFluid flow shear stress(FFSS)を加え、Periostin及び線維化・炎症関連因子(TGF-β1, αSMA, Col1a1, IL-6)の発現変化をqPCRにて評価した所、FFSSによりPerisotin及び線維化関連因子の遺伝子発現の上昇を認めた。また、これまでに黄色靭帯肥厚へのTGF-βの関与が多く報告されている事から黄色靭帯細胞へTGF-β投与した所、同様にPerisotin及び線維化関連因子の遺伝子発現の上昇を認めた。次に黄色靭帯細胞へPeriostinを投与した所、IL-6のみ遺伝子発現の上昇を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はこれまでに力学負荷により黄色靭帯が肥厚するウサギモデルを作成し、網羅的遺伝子解析を行い、黄色靭帯肥厚にも関与する可能性がある分子としてPeriostinを同定していた。ヒト黄色靭帯組織においても肥厚黄色靭帯では他の疾患を有する患者の非肥厚黄色靭帯と比較してPeriostinの発現が有意に増加している事が確認出来た。また、黄色靭帯細胞に力学負荷が与えた所、Periostinの発現が増加する事が確認できた。さらに、過去にIL-6が黄色靭帯肥厚に関与するという報告が複数あるが、 Periostinが黄色靭帯細胞でのIL-6産生に関与しているが事が判明した。 本年度の目標はおおよそ達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
過去に癌細胞や軟骨細胞においてPeriostin-Integrinシグナルを介してIL-6の産生を増加させる事が報告されている。また、IL-6が黄色靭帯肥厚に関与していることも報告されている。今後は黄色靭帯細胞において、PeriostinによるIL-6の発現増加に至るシグナル伝達経路を解明したうえで、黄色靭帯細胞や黄色靭帯肥厚ウサギモデルへのPeriostinやIntegrinのアンタゴニスト投与もしくはsiRNA導入が黄色靭帯の菲薄化もしくは肥厚の悪化を予防するかを検証する予定である。
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