2023 Fiscal Year Research-status Report
エピゲノム解析による新規疾患分類候補肉腫の発生・増殖機序の解明
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22K09368
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Research Institution | Osaka International Cancer Institute |
Principal Investigator |
久木田 洋児 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, ゲノム病理ユニット主任研究員 (60372744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 ハルミ 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 研究所 ゲノム病理ユニット ユニット長 (80164325)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 希少がん / 悪性軟部腫瘍 / 融合遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
希少がんは発症頻度の高いがん種に比べ研究が進んでいないので、症例についての詳細な臨床情報及び基礎生物学的データの蓄積が必須である。本研究では、分子病理学的鑑別を経て新たな疾患分類候補として見出された悪性軟部腫瘍検体の解析を通じて、悪性軟部腫瘍における腫瘍の発生・増殖メカニズムの特異性を見出し、治療法の開発などの臨床応用につなげることを目指している。本年度は、新たな疾患分類候補として判断した2症例の悪性軟部腫瘍組織中に検出された2種類の融合遺伝子産物の転写制御ネットワークおよび組織中のクロマチン構造を明らかにすることを目標とし、FFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)標本検体を用いたHiC-seq解析を行った。症例1については、FFPE検体の品質が悪く、解析に必要な品質のNGSデータが取得できなかった。症例2では腫瘍組織と比較する正常組織由来検体を取得できなかったため、EWSR1融合遺伝子症例の腫瘍組織データを比較対象とした。各症例において、主成分分析に基づく手法により活性のあるクロマチン領域と不活性な領域を検出した後、比較対象と活性が逆転している領域に存在する遺伝子群を抽出した。遺伝子オントロジー解析で症例2に有意に偏っている生物学的プロセスを検出している。また、上記融合遺伝子産物と相互作用する蛋白質の同定を目指して、リコンビナント蛋白質を使用したプロテインアレイスクリーニングを行った。高い相互作用を示した上位100遺伝子産物群についての遺伝子オントロジー解析を行ったところ、融合遺伝子を構成する各遺伝子産物と作用する遺伝子群だけでなく、融合遺伝子産物とだけ作用するプロセスも見られた。このことは、上記融合遺伝子を有する腫瘍組織内には異常な転写制御機構が存在することを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予想以上に劣化していた症例1の検体について、NGSデータ量を多めに取得することにより解決を試みたが、最終的にはNGSデータの取得を断念した。そのため遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、予定した内容を進めるために症例のFFPE検体を用いて遺伝子転写制御領域の解析を進めていく。また、これまでに100症例以上の希少がんを解析したRNAパネルデータが取得済みであり、これらの遺伝子変異、発現データ、臨床情報を統合した解析も進めていく予定でいる。
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Causes of Carryover |
症例1の検体が予想以上に劣化しており、解析を進めることができなくなったため、予定していた症例1の解析費用分が消化できず、次年度使用額が生じた。次年度では次年度使用額と当該年度分を使用して、症例2について予定した内容の解析を進めるとともに、症例1に代わる新しい症例についての解析を新たに追加して研究を進めていく。
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