2022 Fiscal Year Research-status Report
粘液線維肉腫に対するホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を用いた新たな治療方法の開発
Project/Area Number |
22K09376
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤本 卓也 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (00397811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 実 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (00319724)
河本 旭哉 神戸大学, 医学部附属病院国際がん医療・研究センター, 特命講師 (30420558)
安藤 徹 神戸学院大学, 薬学部, 助教 (50639226)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 粘液線維肉腫 / ホウ素中性子捕捉療法 / 細胞株 / 担がん動物モデル / BNCT / BPA |
Outline of Annual Research Achievements |
粘液線維肉腫は、軟部肉腫の約5%を占める稀な悪性軟部腫瘍である。原発性の粘液線維肉腫に対する治療の原則は手術による全切除であるが、高齢者の四肢に好発するびまん性浸潤を特徴とする腫瘍であるため、患者の多くが侵襲的な治療により術後の日常生活の活動度に大きな影響を受ける。ここで、近年、腫瘍細胞内に選択的にホウ素製剤(BPA)を取り込まさせ、熱中性子線照射による中性子とホウ素との核分裂反応により腫瘍細胞のみを選択的に死滅させるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)が着目されている。そこで、粘液線維肉腫に対するBNCTを用いたより侵襲の少ない治療方法の可能性について検討を行うことを計画した。令和4年度は、上肢発生の粘液線維肉腫に罹患した患者から新たに樹立した腫瘍細胞株が、BPAの取り込み能を有することを確認し、ヌードマウスを用いてその担がん動物モデルを作成した。また、担がん動物モデルでの腫瘍および各正常臓器におけるホウ素製剤BPA投与後のホウ素濃度の体内動態を検討したが、腫瘍細胞へのホウ素の集積はやや低値であった。然しながら、組織検査の検討では、粘液を産生する腫瘍細胞のため、単位体積あたりの腫瘍細胞数が少ないことにより単位体積あたりのホウ素の取り込みが見かけ上少なくなる可能性が考えられた。これらの検討結果から、京都大学複合原子力科学研究所の研究用原子炉にて、粘液線維肉腫の担がん動物モデルに対してBNCTを施行し、実際に抗腫瘍効果が得られることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
樹立した粘液肉腫の細胞株をヌードマウス皮下に移植することで腫瘍が形成され、BNCTのための担がん動物モデルの作成が可能となった。また、同担がん動物モデルを用いて実際にBNCTが可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに樹立した粘液線維肉腫の担がん動物モデルを用いてBNCTを施行し、粘液線維肉腫に対するBNCTによる治療効果を確認する。
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Causes of Carryover |
本研究は、多施設との共同研究のため多施設との頻回の訪問を予定していたが、COVID19により可能な限りオンラインでの打ち合わせを行った。また、BNCTについての情報収集のため学会参加を予定していたが、自身がCOVID19に罹患したこともあり積極的な学会への参加を断念したため、次年度使用額が生じた。本年は、BNCTの国際学会がポーランドで開催される予定であるが、ヨーロッパでの現時点での国際状況から現地参加は困難であると思われ、オンラインでの参加が可能であれば参加を予定している。また、BNCTの効果を認める研究結果が得られており、さらに研究を進めるとともに、国際雑誌への投稿を目指して研究成果の論文化を目指して準備を行う。
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