2022 Fiscal Year Research-status Report
胞巣状軟部肉腫発症に導く転写制御ネットワークの解明
Project/Area Number |
22K09400
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
石黒 尚子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50346350)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 骨軟部腫瘍 / 融合遺伝子 / トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
胞巣状軟部肉腫では、発がんの原因遺伝子としてASPL-TFE3融合遺伝子が同定されている。ASPL-TFE3融合遺伝子産物は転写因子として、腫瘍の発症・進展にかかわる下流遺伝子群の異常発現を引き起こすと考えられているが、その分子メカニズムの詳細は分かっていない。本研究課題では、ASPL-TFE3により誘導される遺伝子発現変化をトランスクリプトーム解析で網羅的に同定し、既に得られているゲノム上のASPL-TFE3結合領域の網羅的解析データと統合的に解釈することで、本融合遺伝子が発がんに導く転写制御ネットワークの解明を目指す。 本年度は、RNA-Seq法を用いたトランスクリプトーム解析により、ASPL-TFE3により引き起こされる遺伝子発現変化の網羅的検討を行った。本研究では、研究代表者が過去に樹立した2種類のテトラサイクリン誘導性ASPL-TFE3安定発現細胞株(UE7T/TR-AT細胞、293/TR-AT細胞)を使用した。UE7T/TR-AT細胞および293/TR-AT細胞において、テトラサイクリンによるASPL-TFE3発現融合前後の細胞からそれぞれトータルRNAを回収し、電気泳動による品質評価後にmRNAを精製した。そして、ライブラリーを調製し、次世代シークエンサーを用いたシ―クエンシング解析を実施している。現在、順次サンプルのRNA-Seq解析を行なうとともに、得られたシ―クエンスデータの解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、学内研究支援施設に設置されている次世代シークエンサーを使用してRNA-Seq解析を実施していたが、解析途中に機器の不具合が発生して続行が難しくなった。そのため、受託解析に切り替えて研究を続けることとなり、これに伴うサンプル調製のやり直し等でタイムロスが起こってしまった。また、新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響(研究室スタッフおよび家族の感染による療養や自宅待機)で実験が一時中断したことも重なり、研究計画に若干の遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、RNA-Seq解析を進めるとともにASPL-TFE3誘導前後の細胞株を対象として2群間の発現比較を行ない、ASPL-TFE3により誘導される遺伝子発現プロファイルの変化を網羅的に解明する。そして、得られたRNA-Seqデータと研究代表者がもつ既存のChIP-Seqデータを統合し、ASPL-TFE3により引き起こされる腫瘍特異的な転写制御ネットワークの全容を明らかにする。さらに、KEGGを利用したパスウェイ解析により、腫瘍細胞の動態および腫瘍発生に重要なASPL-TFE3下流遺伝子を探索し、その生物学的影響について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進捗に若干の遅れが生じ、当初計画していた実験の一部が実施できなかったことから、消耗品代や解析費用が抑えられた。また、新型コロナ感染症対策により、出席を予定していた学会がオンライン開催となり、旅費の支出も抑えられた。 使用計画としては、今後の実験で必要な消耗品の購入費用やRNA-Seqの受託解析費用などに充てる計画である。
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