2023 Fiscal Year Research-status Report
胞巣状軟部肉腫発症に導く転写制御ネットワークの解明
Project/Area Number |
22K09400
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
石黒 尚子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50346350)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 胞巣状軟部肉腫 / 融合遺伝子 / ASPL-TFE3 / トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
胞巣状軟部肉腫ではほぼ全症例でASPL-TFE3融合遺伝子が認められ、発がんの原因遺伝子であると指摘されている。ASPL-TFE3融合遺伝子産物は腫瘍特異的な転写因子として働き、その下流遺伝子群が腫瘍の発生・進展に寄与すると考えられる。本研究では、ASPL-TFE3により誘導される下流遺伝子の発現変化をRNA-seq法によるトランスクリプトーム解析で網羅的に同定することで、本融合遺伝子が腫瘍発生に導く転写制御ネットワークを明らかにすることを目的とする。 研究代表者が樹立した2種類のテトラサイクリン誘導性ASPL-TFE3安定発現細胞株(UE7T/TR-AT細胞株、293/TR-AT細胞株)をモデル細胞株として用い、ASPL-TFE3発現誘導前後でそれぞれトータルRNAを回収した。回収したRNAを対象としてRNA-seq解析を実施し、ASPL-TFE3発現誘導前後でどのような遺伝子群がどの程度変化したかを網羅的に明らかにした。また、細胞種の異なるモデル細胞株のトランスクリプトームデータを比較し、細胞背景による発現プロファイルの差異についても検討を行った。その後、RNA-seqデータと既存のChIP-seq解析データを統合してKEGGデータベースを利用したパスウェイ解析を実施し、下流遺伝子群には代謝関連遺伝子、シグナル伝達関連遺伝子、増殖・アポトーシス関連遺伝子などが含まれることが示唆されている。現在、データ解析をすすめており、腫瘍の発生および進展への関与が予測される下流遺伝子の絞り込みを行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RNA-seq解析中に機器の不具合が発生しサンプル再調製や実験条件の再検討などが必要となったこと、トランスクリプトームデータとChIP-seq解析のデータを統合する際のデータ量が膨大で情報処理に想定外の時間を要していることから、進捗がやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続きRNA-seqデータとChIP-seqデータの統合解析を進め、ASPL-TFE3により引き起こされる腫瘍特異的な転写制御ネットワークの全体像を明らかにする。さらに、これらの結果をもとに、胞巣状軟部肉腫の発症・進展に寄与する下流遺伝子についてin vitro解析を実施する。具体的には、内因性ASPL-TFE3発現細胞に下流遺伝子に対する合成siRNAを導入して、腫瘍細胞の増殖能、遊走能、浸潤能などへの生物学的影響を検討する。また、ASPL-TFE3の下流遺伝子を対象にバイオマーカならびに治療標的候補のスクリーニングを実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
データ解析に時間を要しており、当初予定していた実験の開始が遅れたことに伴い次年度使用額が生じた。これらは次年度実施する実験の消耗品費や解析費用として使用する予定である。
|