2023 Fiscal Year Research-status Report
Mechanical stress response of senescent osteocytes: an intercellular communication between bone resident cells mediated by specific secreted factors.
Project/Area Number |
22K09403
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上原 範久 九州大学, 歯学研究院, 助教 (30368211)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | osteocyte / senescence / mechanical stress |
Outline of Annual Research Achievements |
骨細胞は、力学的刺激に対する生化学的応答として、液性因子の分泌を介して骨代謝のみならず、様々な組織の機能を調整する。近年、加齢に伴い骨組織内に老化した骨細胞が蓄積することが明らかとなり、それらより分泌される炎症性物質を代表とする老化細胞特異的因子(SASP因子)が、骨粗鬆症等の加齢に伴う骨量減少の要因の一つとして注目されている。しかしながら、老化骨細胞が分泌する特異的SASP因子とそれら分泌因子を介した細胞間相互作用や、機械的ストレスに対するそれらの影響に関して多くの疑問が残されている。 本年度は、マウス骨細胞株MLO-Y4へのドキソルビシン刺激による骨細胞老化誘導モデルを用いて、ロッキングシーソーによるせん断応力(0.4 Pa)に対して、老化骨細胞の機械刺激応答、骨代謝および細胞老化マーカー発現について検討した。その結果、骨細胞への機械的刺激に対して応答することが知られているプロスタグランジンの律速酵素COX-2遺伝子の発現が誘導されるとともに、老化骨細胞ではコントロール細胞と比較して発現上昇をみたSASP因子群(炎症サイトカイン、ケモカインならびにプロテアーゼ)の発現低下がみられた。興味深いことに、骨芽細胞に対して骨形成を抑制するスクレロスチンや骨吸収をおこなう破骨細胞の活性化因子であるRANKLの発現が、機械的刺激に対して顕著に低下することも確認された。これらの結果より、老化骨細胞を標的とした機械的刺激が、加齢に伴う骨量減少を改善する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度までに、ロッキングシーソーを用いた老化MLO-Y4細胞への機械的刺激(0.08 Pa)モデルでは、細胞老化に伴い発現上昇した炎症性サイトカイン・ケモカイン等の発現低下が確認されていた。しかしながら、骨細胞への機械的刺激に対して応答することが知られているプロスタグランジンの律速酵素COX-2遺伝子の発現が誘導されていないことが明らかとなった。そこで、機械的刺激をより生理的条件に近づけるため、1%メチルセルロースを含む高粘度の培地へ変更し、ロッキングシーソーを用いて0.4 Paの機械的刺激を老化骨細胞へ与えた。その結果、COX-2発現の上昇が確認され、コントロール細胞と比較して発現上昇をみた炎症サイトカインや骨形成を抑制するスクレロスチンが機械的刺激に対して顕著に発現低下した。現在、生理的条件下での機械的刺激(0.8-3Pa)を与えるために、より強いせん断応力を発生することができるパラレルプレートチャンバーを用いる実験系を構築し、機械刺激応答、骨代謝および細胞老化マーカー発現について検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、パラレルプレートチャンバーを用いることで、正常および老化骨細胞に対して生理的条件下(0.8-3Pa)における機械的刺激を行い、RNAseq解析およびバイオインフォマティクスによるパスウェイ解析ならびに機能的クラスタリング解析を行い、機械的刺激に対する老化骨細胞の分子動態を明らかにし、あわせて特異的分泌因子の同定を行う。さらに骨細胞老化の機械的刺激に対する感受と応答に関するメカニズムに関して、qPCR、ウェスタンブロットならびにELISA アッセイによりその機能についてその詳細を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度までに、ロッキングシーソーを用いた老化MLO-Y4細胞への機械的刺激(0.08 Pa)モデルでは、骨細胞への機械的刺激に対して応答することが知られているプロスタグランジンの律速酵素COX-2遺伝子の発現が誘導されていないことが明らかとなったため、骨細胞への機械的刺激モデルの再構築を余儀なくされた。そのため、本年度に計画していたRNAseq解析による正常骨細胞および老化骨細胞への機械的刺激に対する網羅的な遺伝子発現解析が行うことができなかった。 次年度はは、パラレルプレートチャンバーを用いることで、正常および老化骨細胞に対して生理的条件下(0.8-3Pa)における機械的刺激を行い、RNAseq解析およびバイオインフォマティクスによるパスウェイ解析ならびに機能的クラスタリング解析を行い、機械的刺激に対する老化骨細胞の分子動態を明らかにし、あわせて特異的分泌因子の同定を行う。さらに骨細胞老化の機械的刺激に対する感受と応答に関するメカニズムに関して、qPCR、ウェスタンブロットならびにELISA アッセイにより、その機能について詳細を明らかにする。
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