2023 Fiscal Year Research-status Report
慢性期脊髄損傷における脊髄オルガノイド移植による治療法の開発
Project/Area Number |
22K09426
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
幸 博和 九州大学, 大学病院, 助教 (80805276)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 脊髄損傷 / 脊髄オルガノイド / グリア瘢痕 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では脊髄オルガノイドを脊髄損傷マウスモデルに移植し、グリア瘢痕周囲の環境を正常脊髄に類似させることでグリア瘢痕を制御することが可能か、また、その結果として脊髄組織再生が促進されるかを組織学的、分子生物学的手法にて検証し、慢性期脊髄損傷の新規治療法を開発することを目的として研究を行っている。 本研究で使用する脊髄オルガノイドは、IWP-2を添加せずにWntシグナルを活性化させ、さらに神経管の領域特異性を後方化する作用を増強するためにGSK3阻害薬であるCHIR99021を添加して9日間培養(Organoid-9d)することで作成し、脊髄マーカーであるHoxc8、Hoxc10を発現し、脊髄領域に相当する領域特異性を示していることを確認した。 Col1a2-GFPマウスの第10胸髄レベルの脊髄にコンピューター制御下に定量的な圧挫損傷モデルを作成した。脊髄損傷後6週経過時にグリア瘢痕が形成されたCol1a2-GFPマウスの脊髄損傷部の中心に存在する線維性瘢痕は、蛍光実態顕微鏡にてGFP陽性であり、GFP陽性の線維性瘢痕を選択的にを超音波メスにて正常脊髄を損傷しないように除去した。線維性瘢痕を除去した部位にtd Tomato陽性ES細胞由来脊髄オルガノイドを充填するように移植した。 オルガノイド移植後2週経過時の組織学的評価にて、tdTomato陽性の移植したオルガノイドは損傷部にて生着していたが、損傷部にとどまらず、正常な脊髄組織に浸潤するようにオルガノイドが増殖している組織像を認めた。さらに、下肢運動機能評価をBMSスコアにて評価したところ、オルガノイド移植群において、下肢運動機能は時間の経過とともに有意に悪化しており、移植したオルガノイドの無秩序な増殖が正常脊髄にさらなる損傷をきたしていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
移植したオルガノイドの損傷脊髄部での無秩序な増殖が見られたため、オルガノイド培養プロトコールの見直しが必要となったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
慢性期脊髄損傷部に移植したオルガノイドの無秩序な増殖が見られたため、今後は移植前にオルガノイドのWnt/β-カテニンシグナルの異常活性化を抑制するために、CHOR99021を除いた培地でさらに9日間培養を継続して損傷部へ移植するプロトコールへ変更して解析を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
消耗品購入費が予定より抑えられたため、残りを次年度の物品購入などに使用する予定である。
|