2022 Fiscal Year Research-status Report
膀胱癌の再発診断における血漿および尿沈渣中変異DNAモニタリング
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22K09457
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
露久保 敬嗣 岩手医科大学, 医学部, 非常勤医師 (50899359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西塚 哲 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 特任教授 (50453311)
小原 航 岩手医科大学, 医学部, 教授 (90337155)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 尿中DNA / 膀胱癌 / 早期再発診断 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
膀胱癌の再発診断に有用な血液や尿中マーカーに乏しい。本研究では、血液や尿沈渣DNA中に含まれるがん細胞由来の遺伝子変異検出における"再発診断バイオマーカー"としての臨床的妥当性を検証した。 未治療あるいは手術後2年以内の非転移性膀胱癌症例32例を登録した。次世代シークエンサーを用いて症例毎の遺伝子変異を検出した。治療前後や術後定期検査時の計230ポイントで採血・採尿を行い、血漿および尿沈渣DNA中の変異アリル頻度(Variant allele frequency, VAF)をDigital PCR(dPCR)により測定し、その動態をモニタリングした。 観察期間の中央値は516日(30-733日)であった。腫瘍組織の遺伝子変異解析により32例中30例(93.8%)でモニタリング可能な体細胞変異を検出した。1例あたりのモニタリングする体細胞変異数は平均2.3個(1-4)であった。尿沈渣DNAの平均VAFは、再発例で16.7%(0-72.3%, n = 51)、無再発例で0.035%(0-0.87%, n = 196, p < 0.001)であった。尿路再発を生じた7例中5例では臨床的再発診断に先行して尿沈渣DNAのVAFが1%以上に上昇し、その先行期間の中央値は210日(0-441日)であった。尿路再発を生じなかった残り23例はいずれも尿沈渣DNAのVAFは1%以下で経過した。尿沈渣DNA中のVAFモニタリングを施行した30例中25例(83.3%)で、早期再発予測、治療効果判定、無再発確証のうち1つ以上の臨床的妥当性を示した。 膀胱癌は再発率が高い一方、各ガイドラインでも術後フォローアップの適応に関するエビデンスレベルが低いのが現状である。今後、本手法を実臨床に応用できれば、再発リスクを定量的に評価した上で、追加治療適応症例の選定や、過剰な膀胱鏡検査の省略につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シークエンサーを用いた症例毎の遺伝子変異検出や、計230タイムポイント、460の血液および尿検体を用いたDigital PCR実験を終了し、データを統計学的に解析した。本研究により、”尿沈渣DNAを用いた膀胱癌再発診断バイオマーカー”として、再発の早期予測、治療効果の定量的評価、無再発の確証が得られることを示した。今までに研究成果を論文化し、国内外の学会にて研究成果を報告した。また、本研究に用いた手法について特許化した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における"尿DNA中の変異遺伝子の検出"技術については特許化した。今後実臨床への応用を目指し、本技術を用いた前向き観察研究を立案している。本技術により最もメリットが得られるポイントとして以下の2点を検討している。 術前後の尿沈渣DNA中の変異遺伝子の変異アリル頻度(Variant allele frequency, VAF)の動態を評価し、再発リスクを定量的に評価する。①再発高リスク症例(術後尿沈渣DNA中に腫瘍由来の変異遺伝子のVAFが1%以上で持続的に検出される症例)に対しては、BCG膀胱内注入療法等の追加治療を適応し、②再発低リスク症例(術後尿沈渣DNA中の腫瘍由来変異遺伝子のVAFが1%以下に低下する症例)に対しては、不要な侵襲的な検査である膀胱鏡検査を必要以上に行わないことを検討している。
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