2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K09523
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 顕生 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50909653)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 友則 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい准教授 (00631300)
野々村 祝夫 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30263263)
河嶋 厚成 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50746568)
神宮司 健太郎 大阪大学, 大学院薬学研究科, 特任講師(常勤) (80707571)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | Dアミノ酸 / 尿路上皮癌 / 早期血液診断薬 / Dアラニン / 腫瘍代謝 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
血清で測定可能であったDアミノ酸はDセリン、Dプロリン、Dアスパラギン酸、Dアラニンの4種類であった。組織で測定可能であったDアミノ酸は、上記4つに加えてDアスパラギンであった。血清と組織に共通して尿路上皮癌で有意に高値であったのはDアラニンのみであった(血清:p=0.008、組織:p=0.008)。T24、TCCSUPともにHADAを細胞内に取り込むことが示された。Dアラニン添加実験では、増殖能はいずれの細胞株でも亢進された(T24:p=0.0495、TCCSUP:p=0.0495)。浸潤能及び遊走能に関してはT24でのみ亢進された(浸潤能:p=0.0211、遊走能:p=0.0495)。Dアラニン添加・非添加T24の遺伝子発現を解析し、Dアラニン添加により浸潤能・遊走能に関連する遺伝子としてMMP3の発現が上昇していることがわかった(fold change: 1.2、p<0.001)。増殖能に関連する発現変動遺伝子は同定できなかったが、ウエスタンブロット法によりDアラニン添加がmTORのリン酸化を亢進することが示された。臨床検体を用いた検討では、血清Dアラニン値により尿路上皮癌の浸潤度、生命予後のいずれも予測することはできなかった。動物実験においては、MBT2をC3H/HeNのオスマウスに皮下移植して腫瘍の増大速度が変化することが認められた。現在、自然発癌モデルを飼育しながら、Dアラニンを投与中である。尿路上皮癌の診断性能としての側面においては、異なる3つのコホートを用いて、すべてのコホートでAUC0.8程度と高性能な診断性能があることを確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Dアラニン合成酵素は哺乳類の生体内には存在せず、公共データベースを利用した合成酵素探索は困難となってしまった。しかし、Dアラニンの細胞株による機能解析実験は蛍光染色やフローサイトメトリーなど、当初想定していなかった手法により新規に確認することができた。また、RNAシークエンスによりDアラニンが表現型に与える影響の詳細な分子機構の解明も進み、ウエスタンブロット法によりタンパクレベルでの評価も行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
動物実験に関しては、Dアラニンの投与が腫瘍免疫に関与し腫瘍の増殖を制御している可能性が示唆されたため、今後追加で免疫チェックポイント阻害剤との併用効果を検討する予定である。この実験系でポジティブな結果が得られ、その分子メカニズムの詳細が解明されれば、尿路上皮癌治療の新たな候補となりうるデータを得られたため、想定とは異なる結果ではあるが、有意義なデータを得られている。 また、尿路上皮癌の診断性能としての側面においては、異なる3つのコホートを用いて、すべてのコホートでAUC0.8程度と高性能な診断性能があることを確認できており、新規血液診断バイオマーカーとしてはその有効性が確認できたため、次年度中に報告していく予定である。
|
Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行金額に差異が生じた。
|