2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K09543
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鶴賀 哲史 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (70570448)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 卵巣明細胞癌 / 活性酸素 / メタボローム解析 / グルタチオン / 蛍光プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:卵巣明細胞癌(CCC)はr卵巣癌の中で予後不良な組織型の一つであり化学療法抵抗性である事が特徴であり、欧米と比較して本邦に多い事が特徴である。活性酸素種に富む卵巣子宮内膜症性嚢胞内で発生、増殖し、グルタチオン(GSH)を中心とした抗酸化経路活性化が発癌および化学療法抵抗性に関与し得る。本研究では、CCCの代謝依存性を解明し、癌細胞と非癌細胞の代謝バランスを利用した新規蛍光プローブの適用可能性を検討した。方法:CCCと同一症例内正常卵巣組織のペア検体を用いてメタボローム解析および代謝関連酵素の発現解析を行ない、GSH産生に重要なGGT活性を緑色蛍光として検出する蛍光プローブ(gGlu-HMRG)を用いて、蛍光イメージング実験を行った。結果:CCC組織においては還元型GSHやGSH構成アミノ酸(グルタミン酸、システイン、グリシン)の取り込み増加、GSH合成関連酵素の上昇によりGSH代謝が亢進していた。CCCにおけるGSH合成阻害は、過剰な酸化鉄が誘導する細胞死であるフェロトーシスを誘導した。CCCの手術検体12例にgGlu-HMRGを散布し組織イメージングを試みたところ、全例で5分以内に腫瘍と正常卵巣組織を明瞭に区別することが可能であった。結論:CCCにおけるGSH代謝依存性は治療標的になりうる。また、gGlu-HMRGは他癌腫ではすでに臨床応用されており、術中蛍光標識による残存腫瘍低減を目指した臨床応用が期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OCC臨床検体における蛍光プローブの確立、またメタボローム解析も行えたので順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
背景:子宮内膜症は、卵巣明細胞癌および卵巣類内膜癌の発生母地となることが報告されている。上記の結果より、卵巣明細胞癌の酸化ストレス耐性機序としてGSH/GPX4経路の亢進が確認されたが、卵巣類内膜癌においては、グルタチオン代謝の亢進やフェロトーシス耐性に関しては報告されていない。我々は子宮内膜症を有する患者では、子宮内膜症を有さない患者と比較して卵巣類内膜癌と子宮類内膜癌の合併が有意に多く、子宮内膜における異常と卵巣類内膜癌の発生が関連していることを報告した(BMC Womens Health. 2022)。一方、卵巣明細胞癌と子宮類内膜癌の合併は非常に稀である。 卵巣明細胞癌と卵巣類内膜癌は共に子宮内膜症から発生することが知られているが、その発がん機序は異なる可能性があり、これまで子宮内膜と子宮内膜症関連卵巣癌について網羅的に比較検討した報告はない。 目的:卵巣明細胞癌と卵巣類内膜癌の相違や、子宮明細胞癌および子宮類内膜癌との関連について検討を行い、内膜症癌連癌の発生機序を明らかにすることを目的とする。 研究計画:卵巣明細胞癌10症例、卵巣類内膜癌10症例、子宮明細胞癌8症例、子宮類内膜癌10症例の計35症例(卵巣類内膜癌と子宮類内膜癌の重複がん8症例を含む、子宮体癌7症例は正常内膜との比較が可能)について親水性メタボローム解析を行い、トランスクリプトーム解析、ゲノム解析の結果と合わせて、子宮内膜症関連癌の代謝調整機構について統合的に解析を行う。この結果に基づき、gGlu-HMRGが卵巣明細胞癌だけではなく、卵巣類内膜癌や子宮明細胞癌、子宮類内膜癌にも応用可能か、子宮内膜症組織との鑑別に使用可能か、等も検討していく。
|
Causes of Carryover |
研究検討によるエラーが少なく、想定より研究費を抑える事ができた。
|
Research Products
(3 results)