2023 Fiscal Year Research-status Report
胎児血液中の脂質プロファイルが胎盤発達と乳児の身体及び神経発達に及ぼす影響
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22K09544
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
谷口 千津子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 特任講師 (20397425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 宏晃 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70263085)
幸村 友季子 浜松医科大学, 医学部, 助教 (80537415) [Withdrawn]
磯村 直美 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (80647595)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 胎盤 / 胎盤病理 / 乳児発達 / 脂質プロファイル / 胎児血液 |
Outline of Annual Research Achievements |
母体の栄養状態、ストレス、合併症、炎症など様々な因子による子宮内環境の変化は、胎児の諸臓器の発達に影響し、これによる種々の子宮内環境は出生後の発育、健康、疾患発症リスクに影響を及ぼすことが明らかとなってきている。胎児が発育する環境下にあって共に発達する胎盤は胎児最大の臓器と言われ、妊娠母体の様々な健康異常のみならず胎児の健康異常は胎盤の構造や機能に大きな影響を及ぼし、胎盤組織には病理所見として特異的な痕跡をとどめている。本研究では、胎児血中の脂質組成の特色(脂質プロファイル)は胎盤病理所見、乳児期の発育・発達と相関し予測因子となるという仮説を想定し、先行研究で対象とした、浜松出生コホートの中で胎盤が保存されていた258名の症例につき、現在も保存されている臍帯血血清を用いて脂質プロファイルの解析を行い、胎盤病理ならびに乳児期の身体及び神経発達との相関を解析を行っている。 一方、外的要因により母体が受けた影響がどのように胎盤の組織学的変化を与えるのかについても検討を始めており、現在はウイルス感染が妊娠週数によって胎盤へ生じる組織学的変化について解析を行っている。現在までのところ出生1か月以内に母体がウイルスに暴露されると母体の免疫反応による絨毛炎が局所的な変化としてみられ、胎盤全体として胎児血管灌流異常の所見が特徴的であることが示されている。妊娠週数による変化は今後検討予定である。 また、胎盤に多く含まれているという脂肪酸が出生した児の体重との関連についての関連があることが他施設での検討で報告されているため、当施設においても当該脂肪酸と胎盤との関連の研究をすすめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は胎盤組織の解析を先行研究に加えてさらに詳細に解析を行い、昨年度の研究結果をもとに過去の胎盤病理と児の発達をテーマにした論文を集積し、現在の研究内容を比較検討した英文査読付きジャーナルに向けて投稿準備を行っている。 児の発育に関与する胎盤の組織学的変化は多くは母体及び胎児の疾患により変化することが知られているが、外的要因によってどのように変化するかという検討を開始し、具体的には母体のウイルス感染の妊娠週数による組織学的変化の違いについて検討を開始した。 また新たに胎盤の脂肪酸が胎盤組織及び児の発育にどのように関与しているかの検討をはじめており、昨年度に引き続き研究計画を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
浜松出生コホートの児の身体・神経発達に関する評価と胎盤組織変化の検討を継続する。抗炎症作用/炎症促進作用からω3/ω6の視点、さらに胎盤病理の質量顕微鏡による基礎検討の所見からsphingomyelinと phosphatidylcholineの視点から、臍帯血脂質プロファイルと胎盤病理所見の相関について、単変量、多変量解析を行う。 258症例の乳児の4歳までの、体重とPIについて臍帯血脂質プロファイルとの相関を解析し、同様に神経発達についてもMSELを用いた児の評価と臍帯血脂質プロファイルとの相関を解析する。妊娠中の炎症と児への影響を検討するため、妊娠中にウイルス感染症と診断された胎盤及び母児の臨床情報を集積し、炎症による胎盤の組織学的な変化と児の発育に関して検討を継続する。動物モデルを使った検討では胎生期低栄養マウスを用いて胎仔の血清脂質プロファイルと胎盤組織の変化について、ヒトにおける検討結果の解析モデルとして応用しうるか基礎的な検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究自体は順調に進めているが、研究に必要な検体の不足とそれに伴う実験試料の購入が見合わせられたため、予定予算より少ない予算で終了した。今年度必要に応じて予算を使用する予定である。
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