2023 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫を標的とした新たな閉経後骨粗鬆症メカニズム解析と発症予防・治療薬の開発
Project/Area Number |
22K09558
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
大内 望 日本医科大学, 医学部, 講師 (10445752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成尾 宗浩 日本医科大学, 大学院医学研究科, 研究生 (00772310)
根岸 靖幸 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50644580)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 閉経後骨粗鬆症 / 破骨細胞 / サイトカイン / NKT細胞 / マクロファージ / 樹状細胞 / OCH |
Outline of Annual Research Achievements |
閉経後骨粗鬆症は女性のQOLを損なう重要な疾患である。現在様々な薬物治療、運動療法などが推奨されているが、その効果は未だ十分とは言えない。「骨免疫学」は2000年頃から提唱された新概念であり、骨形成・破壊に関して種々のサイトカイン、転写因子、RANK-RANKL系の関与などさまざまなメカニズムが明らかになってきた。しかしながら樹状細胞やマクロファージ、natural killer(NK)細胞、natural killer T(NKT細胞)などの自然免疫系が具体的にどのようにその調整に関わるかは殆ど不明である。 本研究において申請者らは、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、NKT細胞など自然免疫を中心に閉経後骨粗鬆症発症メカニズムを模索している。具体的には、卵巣切除(Ovx)マウスを用いて、骨中に存在する免疫細胞解析、定量的CTを用いた骨形態解析および骨密度・強度解析、mRNAレベルや転写因子の検索、骨髄脂質のリピドミクス解析を行なっている。現時点での骨組織における免疫細胞解析では、破骨細胞の分化増殖抑制に重要なIL-4およびIFNγに関して骨中のnatural killerT (NKT)細胞がその主たる産生源であること、さらに卵巣切除により樹状細胞やマクロファージなどの免疫刺激活性の抑制、下流に位置するNKT細胞からのIL-4およびIFNγ産生が抑制されることを見出している。さらに糖脂質OCHがこれら卵巣切除の効果をキャンセルし、治療的効果があることも見出されている。骨形態解析では、卵巣切除により海綿骨密度、皮質骨密度の有意な低下が認められ、これもOCH投与によって改善する結果が得られている。リピドミクス解析では、Ovxマウス骨髄においてω6脂肪酸代謝産物の有意な蓄積が認められ、これら骨髄内の脂質変化が、骨内免疫細胞の機能変化に寄与するという知見を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在、卵巣切除により樹状細胞やマクロファージの免疫刺激活性の低下(炎症性サイトカインIL-12の産生低下、共刺激因子発現の低下)に引き続く骨中のNKT細胞活性の低下(破骨細胞の分化増殖抑制に重要なIL-4およびIFNγの産生低下)を認めている。さらに糖脂質OCHの投与はNKT細胞からのIL-4およびIFNγ産生増加を引き起こし、治療効果も見出された。リピドミクス解析では、Ovxマウス骨髄においてω6脂肪酸代謝産物の有意な蓄積が認められ、これら骨髄内の脂質変化が、骨内免疫細胞の機能変化に寄与するという知見を得ている。以上の結果について、現在英文雑誌への投稿を準備している。さらに当該内容の学会発表も行なっており、2024年度も引き続きさまざまな学会で研究成果を報告する予定である。以上より当初の計画よりもかなり進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果より、我々は卵巣切除は樹状細胞やマクロファージなどの自然免疫系の抑制とそれに引き続くNKT細胞の活性低下を引き起こし、破骨細胞の抑制が解除され骨量減少が生じる可能性を考えている。さらにリピドミクス解析により、自然免疫系抑制の原因は骨髄中の脂質変化による可能性が示唆されている。今後この結果を論文としてまとめていくことを予定している。 閉経後骨粗鬆症、また卵巣切除したマウスモデルでは、エストロゲンレベルが低下していることが予想される。上記の実験ではこのエストロゲンについての解析、考察はまだ行なっていない。今後、骨内免疫細胞や骨髄脂質変化が、エストロゲンレベルにどのように寄与するかを検討していく。具体的にはOvxマウスにエストロゲン皮下持続薬剤投与(徐放ペレットを予定)を行い、骨内免疫細胞および骨髄脂質解析を行い、その予防効果を検討する。
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Causes of Carryover |
概ね、予定通りに研究費を使用することができた。使用抗体の適正量の調整、滅菌などによる使用機器の再利用を行った結果、若干次年度使用額が生じたと考えられる。
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