2022 Fiscal Year Research-status Report
PD-1/PD-L1シグナル調節による霊長類胎盤の浸潤性獲得機序の解明
Project/Area Number |
22K09582
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡宮 稜子 東海大学, 医学部, 助教 (10908974)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石本 人士 東海大学, 医学部, 教授 (10212937)
後藤 優美子 東海大学, 医学部, 客員講師 (50624574)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | PD-1 / PD-L1 / 胎盤 / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞性栄養膜細胞(CTB)の分化の一型である絨毛外TB(EVT)の浸潤性が低下すると、子宮らせん動脈の拡張不全から胎盤への血流が減少し、妊娠高血圧腎症の発症を惹起すると考えられる。この浸潤メカニズムを明らかにすることは、妊娠高血圧腎症の新たな治療・予防法を開発する上で重要である。PD-1(programmed cell death 1)は活性化T細胞の表面に発現する受容体で、PD-L1 (programmed cell death ligand 1)は癌細胞などが発現し、PD-1と結合するとPD-1発現T細胞は疲弊して死滅する。よってPD-1またはPD-L1を阻害する免疫チェックポイント阻害剤は抗腫瘍効果を持つ。我々は胎盤ではPD-1/PD-L1経路が妊娠免疫寛容に関与し、EVTの浸潤性が増強しているのではないかという作業仮説を立てた。本年度の検討で、ヒト胎盤と、ヒト胎盤に比べ浸潤性のやや低いコモンマーモセットの胎盤を、免疫組織染色とフローサイトメトリーで解析すると、両者の絨毛膜や脱落膜にPD-1発現T細胞を認め、TBにはPD-L1 が発現していた。またヒト絨毛癌細胞株(BeWo, JEG-3)について、PD-1/PD-L1と浸潤・上皮間葉転換調節関連分子であるTrkBの発現を解析したところ、絨毛癌細胞株ではPD-L1の発現は低いがTrkBが高発現であることが判明した。さらにヒトCTBのin vitro培養では、細胞の分化につれ、PD-L1とTrkB 発現が変化することがフローサイトメトリー解析で示された。以上より、絨毛癌細胞では浸潤性が免疫調節機能に対して優位であるが、TBではPD-L1とTrkBの両者を経時的に発現調節することにより、胎盤のPD-1発現T細胞の疲弊作用、母児間免疫応答の抑制作用、脱落膜へのEVT浸潤作用などの機能を協調的に調節している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は胎盤ではPD-1/PD-L1経路が妊娠免疫寛容に関与し、EVTの浸潤性が増強しているのではないかという作業仮説を立てたが、現在までにその仮説に沿った研究成果が得られており、研究の進捗状態は良好である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究で、機能解析が可能なPD-L1を発現する絨毛癌細胞株およびcytotrophoblast培養系、フローサイトメトリーを用いた解析系を構築しており、今後このような実験系を活用し、ヒトとコモンマーモセットの栄養膜細胞や胎盤免疫担当細胞間で、進化的に保存される浸潤関連分子を抽出したり、PD-L1発現と ERK、MMP等の浸潤関連分子の発現を解析し、栄養膜細胞浸潤のしくみを明らかにする計画である。
|
Causes of Carryover |
今年度は研究計画が順調に推移し効率的に実験を行うことができたため、若干の繰越金が発生した。この残金は、次年度以降も引き続き行う細胞生物学的実験の試薬の購入に充てる予定である。次年度以降も、実験の補助を行う研究員の雇用を引き続き行い研究実施体制を維持し、研究を精力的に進めていきたい。繰越金と次年度分の金額の支出については、これまで通り効率的に実施する予定である。
|