2023 Fiscal Year Research-status Report
新たな視点から調節卵巣刺激への反応性を予測する血中オステオポンチンの測定意義
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22K09584
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
中尾 仁彦 日本医科大学, 医学部, 助教 (20591267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 映 日本医科大学, 医学部, 助教 (10333113)
桑原 慶充 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40373013)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生殖補助医療 / オステオポンチン / VEGF / 調節卵巣刺激 / OHSS |
Outline of Annual Research Achievements |
生殖補助医療において調節卵巣刺激によって十分な数の成熟卵子を獲得することは、治療周期当たりの生児出産率を上げる上で重要な戦略である。通常、卵巣予備能を反映する年齢、抗ミュラー管ホルモン、胞状卵胞数を指標として、ゴナドトロピン製剤の投与プロトコールが決定されているが、反応性は個体差が大きく、卵胞が十分に発育しない場合や、過剰な卵胞発育により卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が惹起される場合を経験する。卵胞の数だけでなく、その反応性を質的に予測するマーカーが存在すれば、それを指標とした調節刺激を行う事で、より安全で効率良く成熟卵子を獲得できる可能性がある。 オステオポンチン(OPN)は、全身の組織に分布する多機能糖タンパク質であり、骨代謝マーカー、悪性腫瘍、心疾患、腎疾患、糖尿病など多様な病態におけるバイオマーカーとして知られている。申請者らは、マウスモデルを用いて、ゴナドトロピンサージによりOPNが成熟卵胞の顆粒膜細胞層に著明に発現誘導され、血管内皮増殖因子(VEGF)産生を促進することを発見した 。VEGFは卵胞構成細胞より分泌され、卵胞血管新生を介して卵胞発育を促進する分子である。卵胞液中のVEGF濃度は個々の卵胞発育レベルを反映することが知られている。申請者らは、経口排卵誘発剤を用いた修正自然周期において、卵胞期から採卵時に至るまで血中OPN値は定常であり、その値は卵胞液中のVEGF濃度と正の相関を示すことを見出した。これらの知見より、血中OPNを測定することは卵胞VEGF産生のサロゲートマーカーとして、卵巣刺激反応性を質的に予測する新しいパラメータとして有用である可能性が示唆される。昨年度に引き続き検体採集を続け目標達成数に近づいた。中間解析を行ったが、当初予想していた相関が得られず、またOHSSとの関連を調べようとしたが発症率の低さから十分な解析はできていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生殖補助医療の保険化のため、当院での採卵術が減少しており予定より検体採集が難渋したものの、目標達成数に近づいている。中間解析を行ったところ仮説の相関が得られず、副次的な卵巣過剰刺激症候群との関連についての解析に向け、さらに症例の集積と検討を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
ネガティブスタディだったとしても報告する価値はあるため、本年度でデータを集計したい。また得られたデータで別の着眼点で解析できないか考案中である。
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Causes of Carryover |
生殖補助医療の保険化により当院での採卵術施工数は減少した。集積症例数が今年度でまだ達成できておらず来年度で達成する見込みである。
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