2023 Fiscal Year Research-status Report
オルガネラクラスターの喚起により卵子妊孕性に影響を与える環境化学物質の解明
Project/Area Number |
22K09585
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
宇田川 理 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (50738466)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 卵子 / ミトコンドリア / 環境化学物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵子の妊孕性を吟味できるタイミングとして、顕微受精へ用いられる際の限られた裸化後の時間が挙げられる。健康な児の誕生までを鑑みて顕微鏡下短時間で視認可能なもののうち細胞内構造であれば、オルガネラクラスター(細胞小器官が群がって大きな塊の様に目視される構造体)形成が低妊孕性指標の一つとして位置付けられている。ミトコンドリアは融合と分裂を繰り返す動的なオルガネラである。融合-分裂バランスが不調となる遺伝子改変マウス卵子内ではオルガネラクラスターの発生がみられ、ミトコンドリアの融合-分裂制御タンパク質の分子レベルでの関与が示唆される。例えば副流煙曝露の指標に卵胞液中のニコチン代謝物が用いられるように、卵子は胎児期に形成されてから成人後の排卵に至るまで、環境中の化学物質に曝されるが、ミトコンドリアの融合-分裂バランスへ影響を与えるものは、これまでわかっていない。本研究では、環境化学物質による撹乱の標的としてミトコンドリア分裂に必須の因子であるDynamin related protein 1(Drp1)タンパク質を設定する。令和5年度は、Drp1との親和性を基にした候補物質の選抜を進めた。前年度に設定したDrp1 タンパク質表面ポケットに対し、バーチャル化合物を多く含むライブラリであるLigandBOXを用いた選抜により、ミトコンドリア形態を変化させる候補化合物を得た。一方で環境化学物質に関し、使用量データの取得可能なものとして2020年度に茨城県において使用された農薬に着目した。当研究所データベースWebkis-Plusを活用し、400化合物程度のライブラリを作成し同様にポケットに対する親和性について選抜を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一酸化炭素中毒のようにミトコンドリア呼吸鎖にダメージを与えエネルギー産生を阻害する物質は知られている。しかしながら、ミトコンドリアの融合-分裂バランスに対して影響を与える環境化学物質は全くわかっていない。選抜化合物をマウス卵子に作用させ、ミトコンドリアの形態評価によりバリデートを進めている。阻害活性の高い環境化学物質とその存在量について学術誌への投稿に向け準備を進めており、次年度中に報告したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスから採取できる卵子数には限りがあり、候補化合物数を増やし精度を高める上では培養細胞を適宜活用しながら対応したい。明確な表現型を指標にし、細胞種ごとのミトコンドリア形態の違いなどに留意し進めたい。
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Causes of Carryover |
概ね予定通りの執行であるが相見積もりなどにより、より安価で購入できた試薬があり微かに次年度使用額を生じた。次年度購入予定の試薬経費の調整として活用したい。
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