2022 Fiscal Year Research-status Report
初期胚の発生動態を利用した非侵襲的な性判別法の確立
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22K09611
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
渡部 浩之 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90608621)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 初期胚の性判別 / 発生動態 / 体外受精 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、mW培地でマウス胚を培養したとき、5 細胞への分割が速い胚の約9割が雄胚であることを見出している。そこで以下の実験を行い、発生動態に雌雄差が現れる原因を調査した。 卵子内への精子進入のタイミングに性差があるかを明らかにするために、精子と卵子の共培養時間を短縮したときの受精率を求め、作出された受精卵の性比を調べた。精子の受精能獲得を十分に誘起した(前培養を90分間行った)精子を使用したとき、媒精後10分で22.3%、媒精後20分で78.2%、媒精後30分で94.8%の卵子が受精していた。媒精後10分で受精した卵子の性比を調べたところ、雄の割合が49.2%となり、卵子内への精子進入のタイミングに性差は見られなかった。 マウス胚においてエネルギー要求に雌雄差が存在する結果、雄胚の発生が速くなっている可能性を検証するために、グルタミンとグルコース濃度を改変したKSOM培地内で発生させたマウス胚の発生動態をタイムラプスインキュベーターを用いて詳細に検討した。通常のKSOM培地では、媒精後49時間以内に5細胞に発生した胚のうち雄の割合は48%であった。グルタミンを含まないKSOMおよび高グルコース濃度に改変したKSOMでは、媒精後49時間以内に5細胞に発生した胚のうち雄の割合は各々55および60%となり、培養液の改変は胚の性比に影響しなかった。一方、グルタミン不含かつ高グルコース濃度に改変したKSOMでは、媒精後49時間以内に5細胞期に発生した胚の93%が雄胚となった。 以上の結果から、グルタミン不含・高グルコース環境下で雄胚の発生が速くなることが明らかとなった。これは雌胚と比較して雄胚のグルコース代謝が早期に開始されていることに起因すると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
若干実験の順序が入れ替わったが、当初予定していた「マウス初期胚の発生動態に雌雄差が現れる原因の解明」について、大まかにではあるが原因を特定することができたため「順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の結果から、グルタミン不含・高グルコース環境下で雄胚の発生が速くなり、雌胚と比較して雄胚のグルコース代謝が早期に開始されている可能性が示された。今後は、この点を詳細に解析するために、発生動態に性差が現れるタイミング周辺での遺伝子発現(特にグルコース代謝関連遺伝子)を詳細に解析し、バイオマーカーの探索を試みることで、 性判別効率を最大化できる培養液の開発を目指す。
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