2023 Fiscal Year Research-status Report
初期胚の発生動態を利用した非侵襲的な性判別法の確立
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22K09611
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
渡部 浩之 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90608621)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 初期胚の性判別 / 発生動態 / 体外受精 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの検討により、マウス体外受精卵をグルタミン不含且つ高グルコース環境下で培養したとき、雄胚の発生スピードは速くなり、胚発生を観察するだけで性判別が可能であることが明らかとなった。 そこで、初期胚におけるグルタミン代謝の阻害が胚発生能および雌雄別発生スピードに及ぼす影響について検討した。マウス体外受精卵をグルタミン(0 or 1 mM)およびグルタミン代謝阻害剤BPTES(0-10 μM)を添加したKSOM(高グルコース濃度に設定)培地内で培養し、胚盤胞期への発生率および発生動態をモニタリングした。また、胚を個別に回収後、PCR・高分解能融解曲線解析で雌雄を判定した。グルタミン不含培地で培養した初期胚の胚盤胞発生率は46.9%であったが、グルタミン添加(1 mM)培地では79.5%となり有意に高くなった。また、このグルタミン添加培地にグルタミン代謝阻害剤BPTES(1 or 10 μM)を添加した場合でも、胚盤胞発生率(70.3-80.1%)は高値のまま推移し、グルタミン不含培地と比較して有意に高くなった。グルタミンおよびBPTES(10 μM)添加培地で培養したとき、雌胚と比較して雄胚の発育が早くなり、媒精後51時間以内に5細胞に発生した胚では雄胚の割合(78.4%)が有意に高くなった。 次に、マウス初期胚における解糖系関連遺伝子の発現および発現割合に雌雄差があるかを検討した。媒精後49時間時点で4細胞期と5細胞期の胚を個別に回収し、実験に使用した。媒精後49時間時点で4細胞期または5細胞期に発生した胚間で、解糖系関連遺伝子(Hk1、Pfk、Gapdh、Pgk)のmRNA発現量に差は見られなかったが、Pgkを発現している胚の割合は5細胞期まで発生した胚で有意に高い値を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス初期胚におけるグルコース・グルタミン代謝が雌雄別の胚発生に及ぼす影響について、当初予定していた項目を検討し、マウス初期胚においてグルコース代謝に雌雄差がある可能性を見出した。以上から「順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、グルタミン不含・高グルコース環境下で培養したマウス初期胚では雄胚の発生が速くなり、この現象は胚のグルコース代謝の雌雄差に起因する可能性が示された。今後は、発現遺伝子の網羅的な解析により初期胚の性判別における新たなバイオマーカーを探索し、性判別効率を最大化できる培養液の開発を目指す。
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