2022 Fiscal Year Research-status Report
一酸化窒素(NO)の多機能性からみた鼻副鼻腔における感染防御機構の解析
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22K09668
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
竹野 幸夫 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (50243556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱本 隆夫 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (70448249)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 一酸化窒素(NO) / 好酸球性副鼻腔炎(ECRS) / 味覚受容体 / 上気道 / 嚥下障害 / 鼻副鼻腔 / トランスグルタミナーゼ / 遺伝子多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
「一酸化窒素(NO)の多機能性からみた鼻副鼻腔における感染防御機構の解析」を目的として、一連の研究を遂行し下記の研究成果が得られた。 1)鼻副鼻腔粘膜における苦み味覚受容体のgenotype解析を含めた発現制御機構と、鼻副鼻腔におけるNO産生能力を解析した。その結果、副鼻腔炎(CRS)群ではPAV/PAV(super taster)のgenotypeの割合が少なく、PAV/AVIとAVI/AVIの割合が多い傾向を認めた。組織由来のT2R14、38 mRNAの発現比較では、Non-ECRSの篩骨粘膜とECRSの鼻茸組織において有意差をもって低下を認め、nasal FeNOの低値を伴なった病態との関連性が示唆された。2)組織におけるtransglutaminase(TGM) isoformsの発現が、鼻茸産生病態に及ぼす影響。TGM 1、2、3、5は対象群と比較して、CRSwNP群で有意なmRNAレベルの高値を認めた。同時に、TGM1の発現量は組織中好酸球数密度と有意な正の相関を示した。蛍光免疫染色とLSCMによる評価にて、TGM1産生細胞が好酸球(MBP陽性細胞)の細胞質領域にTGM1が局在していることが示された。またα-トロンビンの存在下において、TGM1は第XIIIA因子と同様のフィブリン重合能を示した。3)嚥下障害患者における味覚閾値の改善効果が及ぼす影響の検討。経皮的感覚神経刺激療法を行い臨床経過を観察した。リハビリによる神経障害の軽減が得られることが期待されたが、改善程度は治療非介入群と同等の結果であった。治療後残存する有害事象の程度や軽減までの期間に注目し検討中である。4)気管支喘息症例からみた上気道病変としてのECRS病態の解析: 呼吸器内科と共同で下気道病変とECRSに関連する気道症状の評価を行っている。同時に抗体製薬による臨床効果予測因子も検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
味覚受容体は口腔・舌のみならず気道系(鼻副鼻腔)にも存在している。中でも苦味受容体(T2R)と甘味受容体(T1R)は上気道自然免疫に関与していることが近年、脚光をあびている。この点に着目し、当科でこれまでに確立したヒト鼻副鼻腔の解剖学的特徴をふまえたnasal FeNO測定法を用いて、上気道における苦み受容体のisoform発現が自然免疫応答を介して、気道のアレルギー・好酸球性炎症に対する防御機構の一翼を担っていることを確認できた。T2Rには25種のサブタイプがあり、特にT2R38はグラム陰性菌体成分に刺激されることによって線毛細胞の賦活化を通じて防御機構を引き起こす。 またT2R38には遺伝子多型(SNP)の存在が確認されており、PAV / PAV遺伝子型をもつ患者はAVIをもつ患者と比較して苦味に敏感で、副鼻腔感染頻度が低いことが示唆されている。この度、日本人を対象とした慢性鼻副鼻腔炎を含む症例の遺伝子多型の解析も加え、慢性鼻副鼻腔炎症例における解析を行い、興味深い結果を得ることができた。 鼻茸成因機序の1つとして、既知の第XIII因子を除く各transglutaminase(TGM) isoformの発現量と鼻茸組織中好酸球との関連、フィブリン重合能について検討を行った。その結果、過剰活性化されたType2サイトカインとフィブリノーゲンを含む漏出血漿タンパクにより生じる浮腫状粘膜においては、細胞質内および細胞膜結合性に存在するTGM1が好酸球の脱顆粒を契機に放出されている可能性が考えられた。 引き続き、ECRS難治化と鼻茸形成因子として、自然免疫応答、遺伝子多型、下気道病変の影響、抗体治療の適応に関するバイオプレディクターの候補などに着目し、疫学データの収集と探索的な研究を継続する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)鼻副鼻腔線毛上皮細胞における苦み受容体(T2R)の発現と機能解析。引き続き、上気道粘膜における自然免疫応答と線毛輸送機能制御におけるT2Rの機能的役割の検討を続ける。培養上皮細胞への遺伝子導入を用いた線毛発生とNOを介した線毛運動制御機構の解析、苦味物質のT2R isoformのアゴニストの探索と臨床応用の可能性の検討、single cell RNA sequenceによる個々の単離細胞の機能的役割の解明。 2)Type2炎症への神経原性炎症の関与について検討。具体的標的分子として、IL-31、Oncostatin M(OSM)などを候補に考えている。Oncostatin M(OSM)はIL-6ファミリーに属するサイトカインの一員である。OSMは鼻粘膜のバリア機能を低下させることが既に報告されており、気管支喘息患者の気管支肺胞洗浄(BAL)中で増加していることからtype2炎症との関連も示唆されているが、その詳細なメカニズムは分かっていない。これらの研究により、くしゃみ(知覚神経刺激閾値の低下)症状が、治療効果評価の指標となりうるかを検証する。これには我々が蓄積した研究技術と症例データベースが役に立つものと考えている。 3)下気道病変(気管支喘息)が好酸球性副鼻腔炎に及ぼす影響の解析と抗体製薬至適使用に関するバイオプレディクターの探索。 呼吸器内科と共同研究で気管支喘息患者における副鼻腔炎と中耳炎の有無と、抗体製薬による喘息への治療介入がECRS重症度分類に及ぼす影響の解析を行う。同時に、鼻汁液中のバイオマーカー候補のサイトカイン・成長因子の測定を行い、喘息治療効果との関連性を解析する。そして鼻副鼻腔炎の表現型との関連性、エンドタイプ解析からみた各種治療薬、特に抗体製薬の有効性の検討と診断基準からみた適応の妥当性について検証を行う。
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Causes of Carryover |
R4年度に成果発表した国際学会を現地参加からポスターに変更したため。投稿論文の刊行予定が遅れたため。 R5年度に耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会(4月、和歌山)の旅費・参加費、論文投稿、掲載費用支出と併せて執行としている。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Distinct Gene Set Enrichment Profiles in Eosinophilic and Non-Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis with Nasal Polyps by Bulk RNA Barcoding and Sequencing.2022
Author(s)
Ishino T, Takeno S, Takemoto K, Yamato K, Oda T, Nishida M, Horibe Y, Chikuie N, Kono T, Taruya T, Hamamoto T, Ueda T.
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Journal Title
Int J Mol Sci.
Volume: 23
Pages: 5653
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Deep Association between Transglutaminase 1 and Tissue Eosinophil Infiltration Leading to Nasal Polyp Formation and/or Maintenance with Fibrin Polymerization in Chronic Rhinosinusitis with Nasal Polyps.2022
Author(s)
Sonoyama T, Ishino T, Takemoto K, Yamato K, Oda T, Nishida M, Horibe Y, Chikuie N, Kono T, Taruya T, Hamamoto T, Ueda T, Takeno S.
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Journal Title
Int J Mol Sci.
Volume: 23
Pages: 12955
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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