2022 Fiscal Year Research-status Report
扁桃における糖鎖不全IgAとT細胞サブセットを中心としたIgA腎症の病態解明
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22K09699
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
寒風澤 知明 旭川医科大学, 大学病院, 助教 (40936332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊井 琢美 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00596306)
高原 幹 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50322904)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 扁桃病巣疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
IgA腎症は扁桃病巣疾患(tonsil induced autoimmune/inflammatory syndrome:TIAS)の代表的疾患であり、口蓋扁桃摘出術+ステロイドパルス療法が本疾患の根治的治療として注目されている。口蓋扁桃がIgA腎症の病勢の維持に必要なことは明らかだが、なぜ扁桃を摘出するとIgA腎症が寛解するかはいまだ解明されていない。近年、IgA腎症の血清中IgA1や腎糸球体沈着IgA1のヒンジ部糖鎖でシアル酸やガラクトースが減少した、いわゆる糖鎖不全IgA1が増加していることが報告されている。しかし、扁桃における糖鎖不全IgA1の発現についてはいまだ未解明であり、さらに扁桃におけるIgAを誘導するメカニズムについても明らかになっていない。本研究では、扁桃培養上清や術前後の血清の糖鎖不全IgA1を解析するとともに、扁桃におけるBAFFなどのB細胞誘導因子、そしてT細胞サブセットに着目し、扁桃におけるリンパ球が糖鎖不全IgA1に及ぼす影響について検討する。本研究の成果に基づき、口蓋扁桃がIgA腎症を引き起こす病態の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまで明らかとされていない扁桃での糖鎖不全IgA1およびThサブセットについて検討する。扁摘によってIgA腎症が寛解に至る症例が数多くいることから、扁桃が本疾患の責任臓器であることは明らかである。しかし、なぜ扁桃を摘出するとIgA腎症の治癒につながるかという決定的なエビデンスは不足している。これまでのIgA腎症に関する研究は腎臓や末梢血、骨髄などを標的としており、扁桃を中心とした解析は少ない。そこで申請者らは責任臓器と考えられる扁桃において糖鎖不全IgA1やTh17の解析を試みることで、これらの因子がIgA腎症の決定的な病因かどうかについて解明していく。腎臓内科領域では基礎的エビデンス不足を理由に扁摘を勧めない施設も散見される。本研究で扁桃がIgA腎症を誘導するというエビデンスを糖鎖不全IgA1とThサブセットを中心に確立することで、本疾患における扁摘の意義を確かなものとする。既に多くの扁桃検体を得ており、順調に実験が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
① IgA腎症の扁桃における糖鎖不全IgA1の産生 IgA腎症患者と非扁桃病巣感染症患者の扁桃単核球を培養し、ELISAにて総IgA1および糖鎖不全IgA1の産生亢進の有無を明らかにする。また、これらの単核球に発現しているToll like receptor(TLR)の発現をフローサイトメトリーで分析し、IgA腎症患者で特異的に増えているパターン認識受容体を解析する。 ② IgA腎症の扁桃におけるT細胞サブセットの解析 IgA腎症患者と非扁桃病巣感染症患者の扁桃単核球から磁気ビーズ法を用いてT細胞を分離し、発現している転写因子(t-betやGATA3、RORgt、Bcl-6、Foxp3)からIgA腎症で特異的に増えているThサブセットを同定する。Thサブセットに有意な差を認めなかった場合は、CD44やCD62L、CD69などのメモリーおよび活性化マーカーを解析することで疾患群間のT細胞活性化を検討する。さらに、これらのT細胞が上清中に放出しているサイトカインをELISAで測定することで、フローサイトメトリーで得られたThサブセットの結果と一致するか確認する。また、扁桃単核球中の樹状細胞やマクロファージといった抗原提示細胞のIL-6などのT細胞分化因子や活性化マーカー(CD86やMHC Class IIなど)をあわせて解析する。
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Causes of Carryover |
検体は十分にたまってきており、フローサイトメトリー抗体を購入して検体を一斉に処理するため資金を確保している。本資金は2023年度の研究には必要不可欠であり、次年度中に使い切る予定である。
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