2022 Fiscal Year Research-status Report
側頭骨扁平上皮癌におけるNLRP3インフラマゾーム機構を介した転移制御機構の解明
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22K09745
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小宗 徳孝 九州大学, 大学病院, 講師 (80529884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 晋彰 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 頭頸科医師 (10859622)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 側頭骨癌 / 扁平上皮癌 / 頭頸部癌 / トランスクリプトーム / マルチオミックス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、腫瘍細胞自体のインフラマゾーム関連分子の発現が、細胞増殖能や浸潤・転移能に関与することが徐々に明らかになってきた。特に、NLRP3インフラマゾームは、多くの癌腫で研究が進んでおり、NLRP3の発現が、腫瘍浸潤能亢進およびリンパ節転移の関与することが大腸癌細胞で明らかになっている。しかし、側頭骨扁平上皮癌におけるインフラマゾームの関与は未だ不明である。本研究では、NLRP3インフラマゾームの活性化が側頭骨扁平上皮癌にもたらす影響を評価し、側頭骨扁平上皮癌のNLRP3インフラマゾームを介した転移制御機構のメカニズムの一端を明らかにするのが本研究の目的である。 本年度は、我々が樹立した外耳道扁平上皮癌細胞株(SCEACono2)を用いて、NLRP3の機能解析を行なった。 典型的な頭頸部扁平上皮癌を比較対象とするために、口腔扁平上皮癌細胞株であるSCC9 もしくは HSC4 を用いた。 細胞内のNLRP3をノックダウンすると、SCEACono2細胞の増殖は有意に抑制され,スクラッチアッセイでも細胞の遊走能は有意に低下した。一方、SCC9では抑制効果はいずれも限定的であった。しかし、RNAseaの結果から、SCEACono2細胞では有意にNLRP3の発現が低下していたが、SCC9ではNLRP3のノックダウン効率が悪いことがわかり、同実験は、再度検証中である。 また、過去の報告では、がん細胞内のNLRP3の発現を抑制すると、上皮間葉転換に関与する遺伝子群の発現が低下するとの報告されている。そのため、NLRP3の発現が、上皮間葉転換を促進することで、細胞の遊走能や浸潤能を亢進しているとの仮設を立て、siRNAでNLRP3をノックダウンした細胞で、E-CadherinとVImentinの発現をウエスタンブロットで確認したが、発現の低下は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、NLRP3 の機能解析を行なった。外耳道扁平上皮癌細胞内でのNLRP3の発現は、細胞増殖亢進にも、細胞遊走能亢進にも関与している可能性が示唆された。これまでの過去の報告では、癌微小環境中の免疫応答細胞内でのNLRP3の機能解析が主流であったが、癌細胞内のNLRP3の発現も、癌の増殖促進や転移の亢進に関与している可能性があることが示唆された。本研究を遂行する上での重要な所見であり、研究初年度の進捗状況としては、順調であると判断している。また、現在、SCC9とSCEACono2のsiRNAでのNLRP3ノックダウン細胞のRNAseq解析を現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、NLRP3 inflammasome pathwayの阻害薬実験を追加して、NRLP3の癌増殖等に関与するかどうか検討していきたい・さらに、SCC9とSCEACono2のsiRNAでのNLRP3ノックダウン細胞のRNAseq解析を進める予定である。また、ノックダウン効率に左右される実験系になるため、NLRP3のノックアウト細胞を、レンチウイルスを用いて作成し、SCC9もしくはHSC4細胞とSCEACono2細胞でのNLRP3ノックアウトで変化する遺伝子群をRNAseqで比較し、NLRP3が関与する遺伝子群の同定を試みたいと考えている。 また、NLRP3で免疫沈降したサンプルのプロテオーム解析を行う。これらの解析結果から、転移制御に関わるNLRP3インフラマゾームの共因子の同定を試みたい。プロテオミクスデータおよびRNAseqデータから絞り込んだ、転移制御に関与する因子と、すでに報告されている頭頸部扁平上皮癌のパブリックデータベースのデータを解析して、側頭骨扁平上皮癌に関与するNLRP3インフラマゾーム関連転移制御の全体像を解明するのが目的である。 今後の機能解析研究のために、扁平上皮癌のマウスモデル作成も同時に行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
扁平上皮癌細胞株において、CRISPR-Cas9ゲノム編集技術を用いて、NLRP3ノックアウト細胞、およびその下流因子であるASCノックアウト細胞の樹立を行う予定を立てていたが、同実験は現在進行中であり、そのため、細胞樹立後に行う予定であったノックダウン細胞でのRNAseq解析を行わなかったことで、次年度使用額が生じた。
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