2022 Fiscal Year Annual Research Report
網膜恒常性維持に対する細胞内NAD動態の時空間的解析
Project/Area Number |
22K09762
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗林 寛 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (00734211)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | NAD / 網膜発生 / バイオセンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、細胞核、細胞質、ミトコンドリアへの特異的局在性を示す3種類のNADバイオセンサープラスミドを用い、網膜発生・維持・疾患時におけるNAD代謝の変化を細胞内で時空間的に捉え、網膜恒常性維持におけるNADの新たな役割を解明することにある。申請者はCambronne et al., Science, 2016で開発されたNADバイオセンサーをCAGプロモーター下へ挿入したNADバイオセンサープラスミドを作製し、マウス網膜での強発現を可能にするシステムを構築した。胎生17.5日目マウス網膜エクスプラントを用い、細胞核局在性NAD合成酵素Nmnat1に対するshRNAとNADバイオセンサープラスミドを共導入し、細胞内の各分画におけるNAD合成に対する影響をフローサイトメトリーおよびライブイメージングにより検討した。その結果、Nmnat1発現抑制下のマウス網膜エクスプラントにおいて細胞核内でのNADの低下を認めた。一方、細胞質とミトコンドリアにおけるNADレベルの変化は認められなかった。これまでに細胞核と細胞質のNAD代謝が競合的に制御されている事を示す報告や、逆に細胞核と細胞質でNADが共有されている事を示唆する報告など、文脈依存的なNAD代謝の制御機構の存在が示唆されていた。本研究の結果から、発生期マウス網膜においては、細胞核と細胞質のNAD代謝は独立性を保って制御を受けている可能性が示唆された。NADやNAD代謝中間体のトランスポーターは複数同定されているが、細胞内コンパートメント間における、これら分子の輸送に関する知見は不十分であり、今後の課題であると考える。
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