2023 Fiscal Year Research-status Report
網膜色素変性を自然発症するカニクイザルの繁殖と治療法開発への応用
Project/Area Number |
22K09769
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
池田 康博 宮崎大学, 医学部, 教授 (20380389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西口 康二 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (30447825)
下澤 律浩 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 主任研究員 (50300786)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 網膜色素変性 / カニクイザル / 疾患モデル動物 / 病因遺伝子検索 |
Outline of Annual Research Achievements |
(テーマ1)疾患家系間の交配で生まれた個体(1頭)ならびに、疾患家系と近親の個体(14頭)について、眼底写真によるスクリーニング検査と霊長類センターでの眼底検査を実施した。すべて正常の眼底であった。 (テーマ2)疾患を発症した個体の眼底検査を実施した。21歳11か月齢雌の網膜変性は黄斑部に及んでおり、視機能は高度に障害されていることが予想された。一方、6歳3か月齢雄では、網膜周辺部に変性を認めるものの、黄斑を含む後極における網膜の色調は保たれていた。 また、疾患個体の皮膚に由来するiPS細胞の樹立を試みた。OCT3/4、SOX2、KLF4およびL-Mycが組み込まれたセンダイウイルスを導入後、ES細胞に似たコロニーが出現した。それらを継代培養したところ、扁平なコロニーを形成し、そのコロニーを形成する細胞は大きな細胞核を持つことが確認された。このようなES細胞と同様な特徴を持つ細胞株が複数得られた。この内の一つについて、三胚葉性の細胞からなるテラトーマへの多分化能を確認するために免疫不全マウスに移植したところ、現在までのところテラトーマ形成は確認されていない。 (テーマ3)疾患家系の雌雄同士による自然交配から6頭の産仔が得られた。また、同様に疾患家系の雌雄交配によって5頭が妊娠中であり、次年度に出産予定である。また、人工授精を疾患家系の2組で実施したところ、2組ともに雌の妊娠が成立した。その内の1頭は妊娠出産歴があるものの、その後は長期間不妊だった個体であり、もう1頭はこれまで妊娠歴が皆無の個体であった。一方、雄の1頭は1回も同居歴のない個体であり、もう1頭は人工授精の利用歴はあるものの12頭の雌との同居でいずれも不妊が記録された個体であった。このように自然交配に適さない雌雄であったが、人工授精を利用することで、効率的に妊娠が得られることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点で新たな疾患発症個体が見つかっておらず、病因遺伝子も同定に至っていないため、全体的にはやや遅れていると判断した。霊長類が研究対象ということもあり、繁殖に時間を要することが理由の1つと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は疾患家系内での繁殖や人工授精による仔が複数いるため、眼底検査等のスクリーニングを進める予定である。人工授精による繁殖も可能であることが確認できたため、積極的に実施する予定である。また、来年度は新たな個体が見つからない場合でも、既存の個体ならびにコントロールとなる疾患のない個体から血液ならびに前房水を採取し、炎症性サイトカイン等のバイオマーカーを測定する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度、既存の疾患個体に加えて新たに発見した疾患個体から血液ならびに前房水を採取し、炎症性サイトカイン等のバイオマーカーを測定する予定であったが、新たな疾患個体が発見されなかったため、来年度に測定を延期した。来年度は新たな個体が見つからない場合でも、既存の個体ならびにコントロールとなる疾患のない個体から血液ならびに前房水を採取し、炎症性サイトカイン等のバイオマーカーを測定する予定である。
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