2022 Fiscal Year Research-status Report
3塩基繰り返し配列を有するマウスを用いたフックス角膜内皮ジストロフィの病態解明
Project/Area Number |
22K09824
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小泉 範子 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (20373087)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フックス角膜内皮ジストロフィ / モデルマウス / トリプレットリピート |
Outline of Annual Research Achievements |
フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)は、角膜内皮細胞の障害によって重篤な視力障害を生じる疾患である。FECDは特に白人における罹患率が40歳以上の人口の約4%と高く、世界の角膜移植の原因疾患の第一位を占める疾患であるが、その病態は不明であり、角膜移植以外には治療法がない。近年、FECD患者の約30-80%において、TCF4遺伝子のイントロン領域におけるCTGの3塩基繰り返し配列(トリプレットリピート)に50回以上の伸長が認められることが報告された。TCF4におけるトリプレットリピート伸長は、FECDに最も強く相関する遺伝的背景であるが、トリプレットリピートの伸長がFECDの発症や病態の進展にどのような役割を果たすのかは不明である。 本研究では、TCF4にトリプレットリピートをノックインしたFECDモデルマウスを用いて、トリプレットリピートがFECDにおける角膜内皮細胞死と細胞外マトリックス過剰産生を生じる機序を解明することを目指す。本年度は、TCF4に100回のctgリピートを持つノックインマウスおよびコントロールマウスの角膜内皮を用いたRNA-Seq解析を行なった。ノックインマウスではコントロールマウスと比べて3707個の発現変動遺伝子が同定され、主成分分析および相関分析により、コントロールマウスと異なる遺伝子発現パターンを示した。さらにGO解析により、ノックインマウスでは細胞間接着や細胞外マトリクス形成に関与する遺伝子の変動を認めた。KEGGパスウェイ解析では、PI3K/Aktシグナルや細胞外マトリクス受容体相互作用に関与する遺伝子変動を認めた。これらの結果より、マウスの角膜内皮におけるctgリピートの伸長が、FECDの臨床的特徴であるECMの制御異常に関与する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
TCF4にトリプレットリピートをノックインしたフックス角膜内皮ジストロフィモデルマウスを用いて、角膜内皮細胞におけるフックス角膜内皮ジストロフィに特徴的な変化であるECMの過剰蓄積(guttaeの形成やデスメ膜肥厚)、角膜内皮細胞障害が認められるかどうかを、接触式スペキュラーマイクロスコープを用いた経時的な観察および電子顕微鏡による組織学的な観察により明らかにする予定である。
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