2022 Fiscal Year Research-status Report
p38MAPKを介した網膜ミュラー細胞の増殖とグリオーシスの制御機構の解明
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22K09842
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
藤枝 弘樹 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70280972)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 網膜 / ミュラーグリア / 増殖 / グリオーシス / p38 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、網膜傷害後に起きるミュラーグリアの増殖、脱分化、反応性グリオーシスの相互関連性とその仲介因子としてのp38の役割を明らかにすることにある。本年度は、ミュラーグリアの増殖と遺伝子発現を定量的に解析するための新規実験モデルを確立し、さらに阻害剤を用いたp38の機能解析を行った。我々はこれまでげっ歯類にメチルニトロソ尿素(MNU)を腹腔内投与することで視細胞変性モデルを作製し、傷害後のミュラーグリア増殖制御機構を解析してきたが、新たにメタンスルホン酸メチル(MMS)を用いた視細胞変性モデルの確立を進めており、網膜傷害およびミュラーグリアの反応性増殖の経過がMNUモデルとMMSモデルで異なること、MMS毒性に対する神経細胞の感受性がマウスとラットで異なることを明らかにした。また、MMS投与後に網膜を器官培養する実験系を確立するとともに、チミジンブロック法によりミュラーグリアの増殖を阻害し、細胞周期に依存した遺伝子発現変化を同定するための実験モデルを作製した。さらにミュラーグリアを分散培養により増殖させ、培養ミュラーグリアの核内タンパク質発現を画像解析により定量化し、種々の制御因子発現と細胞周期との関連性を解析する手法を確立することができた。これらの新規に確立した実験系を用いて、p38の機能解析を開始した。MMS投与後のラット網膜をp38阻害因子の存在下で器官培養したところ、ミュラーグリアの増殖および変性領域への細胞移動がp38阻害により有意に亢進することが明らかになった。したがって、p38が網膜傷害後のミュラーグリアの増殖および細胞移動を抑制的に制御していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MMSを用いた新規網膜傷害モデルの確立、培養ミュラーグリアの解析手法の確立に予想外の時間がかかった。また、当初リン酸化p38抗体を用いた解析も予定していたが、経年劣化で抗体が使用できなくなり、新規抗体の購入および評価に時間を要したため、年度内に十分な成果が得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、リン酸化p38抗体を用いて、傷害後のミュラーグリアにおけるp38活性化を定量化し、今年度確立した新規実験モデルを用いてp38の活性化がミュラーグリアの細胞周期進入に依存して起きる可能性を検討していく。さらに、p38阻害剤を用いた実験系により、p38の活性化がミュラーグリアの増殖や細胞移動を阻害し、かつ反応性グリオーシスを促進することを示し、そのメカニズムとしてp53やpStatとの関連性を解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の実験計画の遅れにより、実験動物の購入数が予定より少なかった。次年度はこの繰越額を合わせた助成金を使用して、必要な実験動物および試薬を購入し、当初の予定通りの研究を実施していきたい。
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