2023 Fiscal Year Research-status Report
象牙芽・エナメル芽細胞標識マウスの象牙質及びエナメル質形成不全の構造と遺伝子解析
Project/Area Number |
22K09901
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
山崎 英俊 三重大学, 医学系研究科, 教授 (00283987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯野 加奈 三重大学, 医学系研究科, 技術補佐員 (10833858)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 象牙芽細胞 / DSPP / GFP / 修復象牙質 / エナメル形成不全 / 象牙質形成不全 / Amelx |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、昨年に引き続き象牙芽細胞特異的遺伝子dentin sialophosphoprotein(Dspp)及びエナメル芽細胞特異的遺伝Amelogenin-X(Amelx)の遺伝子座に蛍光タンパク(GFP或いはtd Tomato)を挿入した遺伝子組換えマウスでこれまで報告してきた象牙質形成不全やエナメル質形成不全による象牙質の異常の原因を解析した。特に、象牙芽細胞特異的遺伝子dentin sialophosphoprotein(Dspp)の遺伝子座に蛍光タンパク(GFP)を挿入した遺伝子組換えマウスを用いて、Dsppの活性度をGFPを指標に検出する系を確立した。 具体的には、 [1]マウス臼歯の咬合面を切削した際に、咬合面直下の象牙芽細胞がダメージを受け、その後、修復象牙質が形成される。その際に、象牙質のダメージを象牙芽細胞が発現するDsppをGFPを指標に検出できるマウスを用いて、まず切削後24時間後に象牙芽細胞が変性し、Dspp発現が著しく減少することをHE染色と併せて確認した。 [2]象牙質再生或いは修復象牙質形成の活性化をGFPの発現を指標に切削後、少なくとも10日目に修復象牙質の形成が開始されることを確認した [3] Tamoxifen 投与にて象牙芽細胞特異的に Cre を発現できるDspp-GFP-merCremer マウスと Cre-LoxP によりジフテリア毒素受容体(DTR)遺伝子を発現誘導できるマウスを用いて切削10日目以降にDT投与により象牙芽細胞の消失を試みたところ、DT非投与郡に比べて、DT投与群ではGFPの発現は有意に減少し、修復象牙質の形成が減少したことをHE染色と併せて検出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R5年度は[1] R4年度にマイクロCT、走査型電子顕微鏡、Ramanレーザー顕微鏡等を用いてAMELX欠損、DSPP欠損、両欠損したマウスのエナメル質及び象牙質の硬度や性状解析を計画し、DSPP欠損マウスの象牙質で基質の変化が起きていることを明らかにした。現在、詳細な点の検討と論文発表の準備を進める段階にある。 [2] Tamoxifen投与にて象牙芽細胞特異的にCreを発現できるマウスとCre-LoxPによりジフテリア毒素受容体遺伝子を発現誘導できるマウスを用いてDT投与により象牙芽細胞を消失させる系での修復象牙質の形成異常の研究については、概ね予定通り実験が進んでいる。最終年度には、DSPPの欠損マウスを用いて、DSPP遺伝子を発現する象牙芽細胞と発現しない象牙芽細胞を比較し、いずれが正常な修復象牙質形成に関わるかを解析し、終了次第、論文の作成にかかる予定である。[3] Tamoxifen投与にて象牙芽細胞特異的にCreを発現できるマウスとCre-LoxPによりMAPキナーゼ遺伝子を除去できるマウスを組み合わせて、象牙芽細胞でのMAPキナーゼの機能を解析する実験を計画している。現在、マウスの交配中である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、[1] DSPP 遺伝子を発現する象牙芽細胞の修復象牙質の形成能について[2] AMELX欠損、DSPP欠損、両欠損したマウスのエナメル質及び象牙質の硬度や性状解析を行ったので、論文を投稿する準備を始める。[3]象牙芽細胞特異的にMAPキナーゼ遺伝子の一部を欠損させた場合の象牙質への影響については、マウスの準備が出来次第解析を開始する。 具体的に、 [1]マウス臼歯の咬合面を切削した際に、象牙芽細胞が重篤なダメージを受け、修復象牙質の形成が開始される。これらの過程をDSPP-GFP/+マウスを用いて象牙芽細胞をGFPの輝度を指標にそのダメージをGFPの輝度の減少と再活性化をGFPの輝度の上昇により検出する系を樹立した。その上で、DT投与により象牙芽細胞を特異的に消失させる系を導入し、GFPとTunel法等組織染色を用いて、象牙芽細胞の再活性化の不良により修復象牙質形成が減少することを証明する。さらに、DSPP-GFP/GFPマウスの象牙芽細胞はDSPPを欠損しており、DSPPを産生できない象牙芽細胞は修復象牙質形成能に異常を持つこと、DSPPを産生できる象牙芽細胞が修復象牙質形成を担うことを検討する。[3]Tamoxifen 投与にて象牙芽細胞特異的にCreを発現できるマウスと、Creにより歯の形態形成やエナメル質分泌に関わることが知られるMAPキナーゼ遺伝子を除去できるマウスを用いて、GFP陽性の象牙芽細胞を指標に象牙芽細胞でのMAPキナーゼの機能を解析する予定である。
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Causes of Carryover |
R5年度に研究結果発表として論文化に伴う英文校正と英文論文投稿料を計上したが、現在、論文作成中で、投稿に至っていないため差額が生じた。R6年度には英文論文の校正と投稿を行い、正しく執行する予定である。
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