2022 Fiscal Year Research-status Report
内因性カンナビノイドを介した自己増幅的甘味応答増強機構の解明
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22K09905
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩田 周介 九州大学, 歯学研究院, 助教 (60780062)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エンドカンナビノイド / T1R2/T1R3 / SGLT1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、予備実験へのデータ追加を中心に行なった。鼓索神経応答記録術を用いた実験で、野生型マウス(C57BL6Jマウス/B6)では、5分おきの2時間にわたる単一味溶液の舌繰り返し刺激により、人工甘味料(SC45647;SC)、二糖類(スクロース)では経時的な神経応答の増強が認められたが、一方で単糖類(グルコース)刺激では、同様の増強は認められなかった。また、他の味質(うま味;モノグルタミン酸カリウム、塩味;塩化ナトリウム・塩化カリウム、苦味;キニーネ塩酸塩、酸味;塩酸)では、同様の繰り返し刺激により自身の応答を増強する効果は認められないことが確かめられた。次に甘味受容体構成分子のT1R3遺伝子欠損マウス(T1R3-KO)を用いたところ、SC、スクロースで生じた応答の増強作用が消失することが明らかとなった。内因性カンナビノイドの関与を検証するため、カンナビノイド受容体阻害薬AM251投与下における繰り返し刺激よる甘味増強効果を調べた結果、SC、スクロースで認められた甘味応答の増強作用は消失した。これらの結果から、この単一味溶液による繰り返し刺激で生じた甘味特異的な応答の増強作用は、T1R2/T1R3を介した甘味受容機構で生じており、近年我々が報告したグルコーストランスポーターを介したT1Rs非依存性の甘味受容経路では生じないことが明らかとなった。また、我々が以前報告した甘味受容細胞にはカンナビノイド合成酵素が発現していることから、AM251で増強作用が消失したことを併せ考えると、T1Rsの持続的な活性化により、その下流でカンナビノイドの合成分泌が進み、自己増幅的な甘味応答の増強が生じている可能性が強まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鼓索神経応答は記録に時間を要し(一匹準備するのに対し手術1時間、切断後の神経を自発放電が減少し記録可能になるまで休ませるのに2時間、さらに応答を記録開始して安定するまでに1時間を要し、その後2~3時間をかけて記録を行う)、特に本研究では5分おきに繰り返し単一味溶液を用いてマウス舌を刺激するというその手法から、検証する全味質で、期待するn数を記録にするのに相当の時間を要する。そのため、予備実験時には、SC、スクロース、グルコースの記録にとどまっていたが、本年度はそのn数を追加するとともに、他の味質(うま味;モノグルタミン酸カリウム、塩味;塩化ナトリウム・塩化カリウム、苦味;キニーネ塩酸塩、酸味;塩酸)についても検証することができた。また、T1R3-KO、カンナビノイド受容体阻害薬AM251の効果に対する検証もスムーズに行えたことからおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
予備実験でも示したように、単一味溶液による繰り返し刺激で生じる甘味応答の自己増幅作用は、アンジオテンシンII(AngII)の投与によりさらに増強する。本年度は、さらにAngIIの阻害薬CV11974を前投与することにより、この効果がどのように変化するかを検証する。また、AM251投与により甘味繰り返し刺激による自己増幅的甘味応答増強作用は消失したことから、エンドカンナビノイドがこの増強作用に関与していることが予想される。仁木ら(J Physiol. 2015)により、マウスT1R3発現細胞にエンドカンナビノイドの2-Arachidonylglycerol(2-AG)の合成酵素が発現していることが明らかになっている。このことから、T1R3の甘味繰り返し刺激による活性化により、その下流で合成酵素活性化を介し、2-AGの合成が進む可能性が予想された。2-AGをはじめとするエンドカンナビノイドは分解されやすく不安定であり、その軽量は困難であるため、この合成酵素であるdiacylglycerol lipase(DAGL)と、同じくマウス味蕾味細胞での発現が報告されている、分解酵素monoacylglycerol lipase(MAGL)の発現量が甘味繰り返し刺激により変化するかを、免疫組織化学的手法やqRT-PCRを用いて検証する。
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Causes of Carryover |
岩手県弘前市で行われる「いきいき健診」に、所属する九州大学口腔機能解析学講座と申請者は参画しているが、コロナ禍での開催ということもあり、会場でのパンデミックの発生や帰省後の学内での感染拡大を防ぐべく、なるべく人の移動を抑えるために、自身が長期に弘前に出張・健診に従事する必要性が生じた。さらに、2022年度をもって九州大学を退職し、2023年度から朝日大学歯学部で助教として勤務することとなった。これらにより研究以外の事務処理に時間を費やされることが必然と多くなり、研究室での実験に従事できる時間が例年よりも減少したため、新規の試薬購入の機会が少なくなることで、2022年度の予算の執行では、物品の購入及びその他で助成金が生じることとなった。朝日大学への移動により、これまでの研究を継続するためには、再度研究環境を整える必要性が生じる。従来用いていた試薬の補充や、現時点で朝日大学の勤務する教室にはいないマウスの購入・飼育費用、本研究で重要な位置を占めている味覚神経応答記録術の応答台の作成に必要となる機材の経費に、この助成金を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)