2023 Fiscal Year Research-status Report
The role of the serotonergic system in the development of feeding
Project/Area Number |
22K09918
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
中村 史朗 昭和大学, 歯学部, 教授 (60384187)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 富雄 昭和大学, 歯学部, 名誉教授 (70184760)
弘中 祥司 昭和大学, 歯学部, 教授 (20333619)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 生後発達 / セロトニン / 三叉神経運動ニューロン / シナプス伝達 / 顎運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
吸啜から咀嚼への発達時期に、情動や運動など多くの脳機能調節に働くセロトニン神経系が発達する。吸啜期でのセロトニン作動薬の脳内投与は、吸啜から咀嚼への転換時期を変化させることから、吸啜や咀嚼を司る神経基盤の生後発達機構にセロトニン神経系が何らかの役割を果たす可能性が示唆されている。本研究では、パッチクランプ法を主体とする電気生理学的手法やオプトジェネティクス等の遺伝子工学的手法を用いて、摂食運動機能を司る中枢神経機構の生後発達に対するセロトニン神経系の関与を解明することを目的とする。 吸啜や咀嚼は閉口筋や開口筋のリズミカルな活動により生じる。閉口筋、開口筋の活動はそれぞれの筋を支配する運動ニューロンによって制御されている。さらに運動ニューロンは、プレモーターニューロンからの興奮性・抑制性入力を受ける。したがって、プレモーターニューロンの生後発達様式を明らかにすることは、吸啜から咀嚼への転換機構ならびにそれに対するセロトニンの影響を解明する上で不可欠である。そこで2023年度は、プレモーターニューロンの興奮性の生後発達様式を解析した。そこで、Phox2b-EYFPラットを用いて、Phox2b陽性ニューロンからパッチクランプ記録を行い、活動電位特性を解析した。その結果、Phox2b陽性ニューロンの静止膜電位、入力抵抗、キャパシタンス、閾膜電位は生後発達期で変化はみられなかったが、活動電位の発生頻度が日齢が進むにつれて有意に増加した。また、発火頻度33 Hzを境に高頻度発火型と低頻度発火型に分類したところ、日齢が進むにつれて高頻度発火型を示す割合が増加した。以上の結果から、顎筋支配運動ニューロンに出力を送る興奮性プレモーターニューロンは生後発達に伴い興奮性が上昇することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
吸啜や咀嚼を制御する中枢神経機構は未だ不明な点が多いが、顎運動の基本パターンを生成するパターンジェネレーターが脳幹に存在することが報告されている。そのなかで、リズムジェネレーターからの出力を受けるプレモーターニューロンは顎筋支配運動ニューロンへ興奮性・抑制性出力を送り、さらに、顎筋支配運動ニューロンはこれらの出力を統合した後、最終運動指令を閉口筋・開口筋へ送る。したがって、プレモーターニューロンの生後発達様式を明らかにすることは、吸啜や咀嚼に関わる神経機構ならびにそれに対するセロトニンの影響を解析する上で不可欠である。先行研究から、三叉神経運動核の背側網様体に転写因子Phox2bを発現するニューロンが高密度で存在し、それらの大部分が三叉神経運動核に直接投射する興奮性のプレモーターニューロンであることが報告された。そこで2023年度は、Phox2b-EYFP遺伝子改変ラットを用いて、Phox2b陽性ニューロンからパッチクランプ記録を行い、活動電位特性の生後発達変化を解析した。その結果、Phox2b陽性ニューロンの静止膜電位、入力抵抗、キャパシタンス、閾膜電位は生後2~5日齢、9~12日齢、14~18日齢間で差はみられなかったが、活動電位の発生頻度が生後2~5日齢よりも14~18日齢で著しく高いことが示された。また我々の先行研究をもとに、ニューロンを発火頻度33 Hzを境に高頻度発火型と低頻度発火型に分類したところ、14~18日齢で高頻度発火型を示す割合が高い結果となった。以上の結果から、顎筋支配運動ニューロンに出力を送る興奮性プレモーターニューロンは生後発達に伴い興奮性が上昇することが示唆された。以上より、研究成果は順調に得られている状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度には、プレモーターニューロンの興奮性の生後変化が示された。そこで2024年度には、生後発達期ラットを用いてプレモーターニューロンの活動電位特性に対するセロトニンの効果をパッチクランプ法により解析し、摂食運動機能に関わる局所神経回路に対するセロトニンの役割を検討する。
|
Causes of Carryover |
2023年度は、すでに本研究室で所有している物品、試薬、機器類を使用することで実験を進めることができた。2024年度は2023年度に引き続き、ラット脳スライス標本作成に使用する実験動物の管理・飼育費、標本作成に必要な試薬(細胞内液、細胞外液の構成薬物、セロトニン受容体作動薬、拮抗薬等)、ガラス・プラスチック器具、パッチクランプ記録に必要な物品(ガラス電極、電極ホルダー、顕微鏡備品、PC関連物品等)を購入する。研究成果を発表するための費用として国内外の旅費、学会参加費、研究成果を出版するための費用として、英語の校閲費用、論文投稿費用、別刷り購入費用を必要とする。
|