2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K09920
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
藤田 智史 日本大学, 歯学部, 教授 (00386096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 一徳 日本大学, 歯学部, 助教 (90617458)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 神経活動マーカー / 膜電位感受性色素 / 歯根膜 / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科臨床ではしばしば原因となる歯と異なる歯が痛いと錯覚する「歯痛錯誤」が上顎、下顎の間で認められる。感覚を最終的に処理する大脳皮質には、上下顎の情報が混ざるが機構となっていること考えられる。実際、過去のラットにおける膜電位感受性色素を用いたマクロイメージングでは、上下顎の臼歯歯根膜を短時間刺激した時に応答する領域は一次体性感覚野、二次体性感覚野と島皮質の境界領域の2ヵ所に存在し、その大半は重複し体部位局在が明確でないことが明らかとなっている。一方で、近年、マウスにおけるカルシウムイメージングで連続刺激をした時の応答は、ラットとは異なり、一次体性感覚野、二次体性感覚野、島皮質の3ヵ所に応答領域が認められることが報告されている。このように、大脳皮質のどこで歯の情報処理をしているのかは未だ不明な点が多い。本年は、この違いが観察手法によるものか、刺激方法によるものなのか、種差によるものなのかを明らかにするため、マウスにおける膜電位感受性色素を用いたマクロイメージングを行った。ウレタン麻酔下で、島皮質と二次体性感覚野の境界を中心に開窓を行い、同部位の応答を負荷した膜電位感受性色素の輝度変化として捉えた。短時間刺激に対する応答は、マウスでもラットと同様に一次体性感覚野および島皮質の背側あたりの2ヵ所から始まった。また、過去の連続刺激を行った時のカルシウムイメージングとは異なり、2次体性感覚野に独立した応答を示す個体は少数であった。上下顎の応答領域はラットと同様にほぼ重なる様子が認められた。これらのことから、歯根膜からの情報を受容している大脳皮質部位はラットとマウスの間に大きな差は無いことが示唆された。現在、連続刺激に対する応答の記録解析を進めており、その結果から、過去の報告の差異が生じる理由や、情報処理に関わる部位の解明が進むことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定した膜電位感受性色素を用いた光学計測法の記録は順調に推移している。ただし、一部の解析は煩雑なため、解析に時間を要している。なお、現在使用している膜電位感受性色素は製造中止となっており、今後、購入することができない状況となっている。本研究で膜電位感受性色素を用いてまず行う予定だった記録は、過去に保有していた膜電位感受性色素を用いて行えたため、大きな影響は無い。次年度以降は、歯根膜刺激に応答するニューロンが存在する領域を、免疫染色によって明らかにしてく予定である。その準備もすでに開始しており、現時点では、遂行に当たり大きな問題は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、今後、免疫染色を行うための前段階として、過去のイメージングによる結果の違いを明らかにするために、特に着目すべき領域の同定、実験条件の確立を進めてきた。免疫染色後の解析方法に関しての手法に関しては、これから検討を要する課題が残っているものの、マウスの歯根膜からの情報を受け取る大脳皮質の部位や刺激条件などの実験条件を検討するのに要する記録はおおよそ得られていると考えられる。今後、イメージングで得られた記録の結果に対する解析を進めて、免疫染色法による検討を進めて行く予定である。次年度は、組織解析に有用と思われる機器を導入することで、時間効率を上げて対応する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度では膜電位感受性色素を用いた検討を予定していた。しかしながら、使用予定であった膜電感受性色素は製造中止となっており、販売されていない状況となっていることが分かった。膜電位感受性色素を購入する予定であったが分、残金が生じている。なお、実験には、すでに保有していた膜電位感受性色素を用いて実験を行い、今後の追加実験の必要性が生じた場合には、別途対応を考える必要があるものの、現時点でまず必要と考えられた記録はすでに行うことができた。次年度への繰越金は、今後行う免疫染色に用いるのに必要な材料の購入、より精度の高い検討を行うための機器に要するため、令和5年度の助成金と合わせてこれらに使用する。
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Research Products
(1 results)