2022 Fiscal Year Research-status Report
低酸素特異的転写調節因子HIF1αが誘導する歯髄組織特異的硬組織誘導のメカニズム
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22K09960
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
興地 隆史 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80204098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 伸之 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (60272605)
大島 勇人 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70251824)
野田 園子 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 特任助教 (70844322)
藤井 真由子 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 医員 (80844357)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 歯髄 / 低酸素誘導因子1α / 硬組織形成誘導 / Wntシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
歯髄組織は周囲を硬組織に囲まれており、炎症により歯髄内圧が亢進することで容易に循環障害に陥ることが知られている。また、外傷により歯が脱臼することにより、歯髄血流の断絶がしばしば惹起されるが、歯髄生活反応が回復したとしても歯髄腔の狭窄あるいは石灰化が観察される。これは、歯髄血流の障害に伴い、歯髄組織が低酸素状態におちいることにより誘導された可能性が推察される。しかし、低酸素状態と硬組織分化の関連については不明な点が多い。そこで、歯髄幹細胞を低酸素(1%)下にて培養あるいは低酸素特異的な転写調節因子である低酸素誘導因子1α(HIF1α)を強制発現したところ、RUNX2、アルカリフォスファターゼ、オステオカルシンといった硬組織形成細胞特異的なマーカー遺伝子の発現が亢進した。次に、Wntシグナルについて検討したところ、TCF1等のマーカー遺伝子とともに、Wntシグナル関連遺伝子でβカテニンの核内移行の補助因子であるBCL9の発現も亢進していた。BCL9にはhypoxia response elementが存在することから、HIF1αにより発現が誘導されたと推測される。BCL9はβカテニンに結合し、BCL9の強制発現および発現抑制はWntシグナルおよび硬組織分化マーカー発現を増強および抑制した。低酸素培養した歯髄組織においてβカテニンの核内移行およびβカテニンとBCL9の共存が確認された。以上より、歯髄幹細胞において低酸素状態はHIF1αの発現を介してBCL9の産生を誘導し、その結果Wntシグナルの活性化を介して硬組織形成細胞への分化が誘導されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の第一段階である「低酸素環境下における硬組織形成細胞分化誘導の検証」については,当初計画に従い順調に進捗した.第二段階である「低酸素環境下における硬組織形成細胞分化誘導シグナルの検討」についても,Wntシグナルマーカー遺伝子とともに、Wntシグナル関連遺伝子でβカテニンの核内移行の補助因子であるBCL9の発現を確認しており,概ね順調に進捗したと評価される.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従い,BMPシグナル(リン酸化SMAD1/5/8およびSMAD4)の発現解析(Western Blotting),およびHIF1αの下流でBMPシグナルを誘導する因子の解析を進めるとともに,マウス臼歯再植,移植モデルを用いたHIF1α,Wntシグナルおよび硬組織形成細胞マーカー発現の検討を行う予定である.
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Causes of Carryover |
COVID2019による流通制限により,購入予定物品の年度内調達が不可能となったため次年度使用額が生じた.制限の緩和により調達を見込んでいる.
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Research Products
(3 results)