2023 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺原基のブランチング形成初期過程におけるオートファジーの関わり
Project/Area Number |
22K10028
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
柏俣 正典 朝日大学, 歯学部, 教授 (30152630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
設楽 彰子 朝日大学, 歯学部, 准教授 (30508718)
大野 雄太 朝日大学, 歯学部, 講師 (30796644)
長瀬 春奈 朝日大学, 歯学部, 助教 (40888799)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 唾液腺 / 顎下腺 / 分枝形態形成 / 上皮間葉相互作用 / ブランチング形成 / オートファジー / Bafilomycin A1 / Torin 1 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス顎下腺の発生は、胎生11日目に口腔底粘膜上皮が粘膜下の間葉組織に陥入することにより始まる。その後、上皮は間葉との相互作用によって枝分かれ反応(分枝形態形成:ブランチング形成)を繰り返して腺構造が完成する。ブランチング形成は顎下腺原基を栄養液に浮かべたフィルター上で培養しても観察される。このことは顎下腺原基自体にブランチング形成を誘導する仕組み(エネルギー利用も含め)が存在するを示している。本研究の目的は、唾液腺の発生過程において、オートファジーの果たす役割を明らかにすることである。オートファジーは細胞質の内容物をリソソームに運んで分解するシステムの総称である。現在までに組織発生にオートファジーが関与する報告は少なく、詳細なメカニズムは明らかになっていない。培養顎下腺原基にオートファジー阻害薬のBafilomycin A1を添加すると分枝形態形成が著しく抑制された。この結果は顎下腺の発生過程でオートファジーが関与していることを示唆している。また、培養顎下腺原基のブランチング形成はオートファジー誘導薬のTorin 1の添加によってもブランチング形成が抑制された。オートファジーがブランチング形成にいかなる機序で関わっているのかを推定するため、オートファジー阻害薬と誘導薬を添加した顎下腺原基のLC3-ⅠとLC3-Ⅱの検出をウエスタンブロット法で行ったところ、LC3-ⅠとLC3-ⅡはBafilomycin A1とTorin 1の処置によって増加していることがわかった。LC3-ⅠとLC3-Ⅱはオートファゴゾームのマーカーとして知られ、隔離膜からリソソーム分解の過程までオートファジー構造に局在している。今後、Bafilomycin A1とTorin 1によるブランチング形成の抑制とLC3の増加がどのような意味を持つのかを明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オートファジーは、細胞の自己成分をライソゾームに運び分解する機構と定義され、分解産物のアミノ酸や脂肪酸を細胞内で再利用して飢餓応答としての栄養補給の役割がある。本研究では、顎下腺原基の発生過程でみられる活発な細胞増殖や細胞分化などのダイナミックな生命現象を支えるエネルギー供給系にオートファジーが関わっているという仮説を検証してきた。Bafilomycin A1は液胞型H+-ATPase特異的阻害薬でpHを上昇させることでリソソーム内の酸性加水分解酵素を不活性化させてオートリソソームの機能を阻害する。培養顎下腺原基にBafilomycin A1を作用させると著しい分子形成の抑制が観られた。しかし、この抑制効果は顎下腺原基の培養後24時間後あるいは48時間後に添加した場合には観られなかった。このことは顎下腺原基の発生の初期にオートファジーが関わっていることを示唆していた。また、オートファジー誘導薬のTorin 1を培養顎下腺原基に添加した場合、ブランチング形成反応が若干抑制されることが確認された。すなわち、オートファジーの阻害薬であるBafilomycin A1と促進薬であるTorin 1の投与が共に顎下腺の分枝形態形成を抑制した。オートファジー阻害薬と誘導薬を添加した顎下腺原基のLC3-ⅠとLC3-Ⅱの検出をウエスタンブロット法で行ったところ、LC3-ⅠとLC3-ⅡはBafilomycin A1とTorin 1の処置によって増加していることがわかった。オートファジーの隔離膜の形成からリソソーム分解の過程で出現しているLC3-ⅠとLC3-ⅡがBafilomycin A1とTorin 1の処置によって増加している理由を明らかにする必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
オートファゴソームの膜の形成にはATG遺伝子はオートファゴソームの形成を調節するAtgタンパク質をコードしている。このAtgタンパク質にはAtg5、LC3およびp62/SQSTM1(特定のタンパク質をオートファジーへと導く受容体)などが知られている。これまでの研究によりLC3タンパク質の顎下腺原基内の存在が明らかになった。また、オートファジー阻害薬と誘導薬によってLC3-ⅠとLC3-Ⅱが増加することがわかった。今後、他のAtgタンパク質の挙動を明らかにして顎下腺原基のブランチング形成におけるオートファジー関わりについてウエスタンブロット法によって明らかにする予定である。なお、これらのタンパク質に対するmRNAをリアルタイムRT-PCRによって定量する方針である。
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Causes of Carryover |
実験データの解釈に時間を要しており研究の進行がやや遅れている。その結果実験が思うようにいかなかったため、計画を次年度に繰り越す必要がある。特にウエスタンブロットの実験計画とリアルタイムRT-PCRを実施する予定である。
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