2022 Fiscal Year Research-status Report
咀嚼が大脳皮質神経細胞におけるコレステロール輸送とAβ集積に与える影響
Project/Area Number |
22K10106
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
豊下 祥史 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (20399900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川西 克弥 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (10438377)
菅 悠希 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (20803620)
高田 紗理 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (30835781)
越野 寿 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (90186669)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Alzheimer病 / 咀嚼 |
Outline of Annual Research Achievements |
咀嚼が認知機能の維持、向上に重要な因子であることが報告されている。さらに咀嚼が認知症の予防に有効であることを示唆する報告も認められるがその詳細なメカニズムについては不明である。本研究では咀嚼が認知症のうち、Alzheimer病の予防に有効か否かを検証するために以下の実験を行った。 9週齢のWistar ST 雄性ラットについて固形試料を給餌する咀嚼群と液体飼料を給餌する非咀嚼群を設定し、12週間飼育した。飼育終了後、脳組織と脳脊髄液の採取を行った。脳組織は小脳、延髄、視床下部、中脳・海馬・線条体の複合部、大脳皮質に分割した。各部位の組織をRNA抽出試薬で処理を行い、総mRNAを抽出し、ヒスタミンレセプター(H1、H2、H3、H4)の発現をreal time RT-PCR を用いて分析した。さらに、ELISA 法を用いて、脳組織全体および脳脊髄液中に存在するAmyloidβ1-40(Aβ-40)及びAmyloidβ1-42(Aβ-42)の定量を行った。 咀嚼群と非咀嚼群のヒスタミンレセプターの発現については、各レセプターともに有効なCT値が計測できておらず、両群の相違について結論が得られていない。ハウスキーピング遺伝子については問題なくCT値が得られていることから、テクニカルな問題ではなく、実験条件が問題と考えられる。一方、脳脊髄液におけるAβ-42/40比を算出したところ、非咀嚼群の脳脊髄液のAβ-42/40比は咀嚼群のそれの0.28倍であった。非咀嚼群の脳組織100mg中のAβ-42は咀嚼群のそれの1.66倍の値を示し、脳組織においては非咀嚼群が咀嚼群よりも優位に高い値を示した。Alzheimer病の前段階において、脳脊髄液のAβ-42が低下すること、脳組織へのAβ-42の蓄積が増えることが報告されており、咀嚼がAlzheimer病の予防に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究計画は次の2点が挙げられる。 ①咀嚼動態の変化がAβの集積へ影響を与えるか否か。 ②咀嚼動態の変化がコレステロールの輸送や局在に影響を与えるか否か。 今年度、咀嚼が脳脊髄液におけるAβの変化に与える影響は有意差がなかったもの低下を示しており、脳組織においては咀嚼が組織内へのAβの集積を有意に抑制していることを明らかにした。まだ免疫組織学的検討によって実際のAβの脳組織への集積抑制は確認できていないが、咀嚼動態の変化がAβの集積へ影響を与えていることは確認することができたため、概ね予定通り進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
咀嚼とAβの変化に関して、実際にAβの脳組織への集積に影響が出ているかどうかについて、今後組織学的検討を進めていく予定である。さらに今後、咀嚼とコレステロール動態との関連について分析を進めていく予定である。しかしながら、コレステロール動態は咀嚼がAβ集積の変化に与えるメカニズムの仮説の1つに過ぎない。コレステロール動態を検索すると同時に、咀嚼がAlzheimer病の関連する遺伝子をPCRによって解析すること、ミトコンドリアの機能低下がAβオリゴマーの形成に深く関与していることが報告されていることから、咀嚼と中枢神経細胞におけるミトコンドリアとの関連についても分析を行っていきたいと考えている。
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