2022 Fiscal Year Research-status Report
周術期脳虚血モデルでの原因遺伝子の解析とデクスメデトミジンの脳保護作用機序
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22K10142
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
前田 茂 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50253000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 朋香 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (40527066)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 術後認知機能低下 / 脳虚血 / 周術期管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の全身麻酔は麻酔薬とモニタの進歩により,過去に比べて安全性が格段に向上している。一方で本邦では高齢化が急速に進んでおり,麻酔管理の安全性の向上が相まって,高齢者に対する全身麻酔を行うことが増えており,高齢者に対する手術適応が拡大している。そのような環境の中で,高齢者に対する全身麻酔後の術後せん妄や認知機能の低下は,現在の麻酔管理において解決すべき問題の一つである。われわれは周術期の特徴を,血圧低下による脳血流の低下と,手術侵襲による炎症反応と考えており,脳血流の低下と炎症性サイトカインの相互作用により中枢神経系の炎症反応が強く惹起され,それが認知機能の低下をもたらしていると考えている。 本研究では,現在までにマウスで周術期脳虚血(PBI)モデルを作成し,海馬の歯状回でアポトーシスが誘導されることや海馬において炎症反応が強く誘導されることを示してきた。今年度はあらたな実験室を整備し,動物実験から免疫染色を行うことや,ウエスタンブロット,およびリアルタイムPCRを行うことができるように整備を進めた。まず動物ではICRマウスを用いてモデルを作成することができた。今後サンプルから当初の予定通り,網羅的な遺伝子の解析を進める。一方,細胞を用いた研究ではヒトニューロブラストーマ由来のSH-SY5Yを用いて低酸素と少量のLPS投与を組み合わせたモデルを作成し,タンパクを抽出してCaspase-3のウエスタンブロットを行った。現在のところ,優位な結果は得られていないが,今後は計画に沿って研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在の所属に着任後,教室の諸々の整備を行っている。現在までに基本的な実験が行えるような状況が整い,少しずつ結果が得られているところである。具体的には細胞培養を行うためのクリーンベンチ,インキュベータ,ディープフリーザを整備し,ウエスタンプロットの機材一式を揃え,リアルタイムPCRが稼働するようになった。また学内共同実験室を使うことにより,免疫染色から傾向顕微鏡写真撮影,また動物ではビヘイビアや手術を行うことが可能となった。2022年度はこれらの整備を進め,実際に勢力的に実験を進めたが,報告すべき結果は今の所得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では,周術期脳虚血モデルにおいてデクスメデトミジンおよびその各種拮抗薬を投与し,記憶機能をビヘイビアで調べ,その後,海馬における遺伝子の変化を網羅的に解析するとともに特に反応が強かった遺伝子に対応したタンパクの局在を調べるとしていたが,ビヘイビアの実験は時間を要することから,用いる拮抗薬の種類を絞り,今回特に注目しているimidazole受容体の拮抗薬のrilmenidineのみでデクスメデトミジンの機序を調べることとする。また,その後の細胞実験ではヒトニューロブラストーマ由来のSH-SY5Yとマウスアストログリア由来のMG6を用いる予定であったが,SH-SY5Yに 絞ってsiRNAを使ったloss of function試験を行う。
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Causes of Carryover |
当初の予定に比べて消耗品の購入が少なかったことが次年度使用額が生じた理由である。次年度には動物実験を行うため試薬などの購入に充てる予定である。
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