2022 Fiscal Year Research-status Report
無菌蚕由来のシルクフィブロインによる人工骨膜の開発
Project/Area Number |
22K10205
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
江口 貴紀 鶴見大学, 歯学部, 助教 (70832814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長島 孝行 東京農業大学, 農学部, 教授 (20231483)
石塚 忠利 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (20892954)
川口 浩司 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (50277951)
濱田 良樹 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70247336)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | シルクフィブロイン / 無菌蚕 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨再生のscafoldの開発を目的としているが、前段階として組織内の基本的な生体反応を明らかにするための実験をおこなった。具体的には、C57BL雌マウスにおいて、骨膜と似たような強度を持ったシルクフィブロインシートとコラーゲンシートを、それぞれマウス腹直筋欠損部に用いて1週間、2週間、1カ月間での組織生体反応を肉眼とHE染色病理組織像で解析した。 肉眼所見では、コラーゲンシート、シルクシート共に、消化管との癒着は無く、それぞれの構造を保持しながら消化管の逸脱(ヘルニア)を防いでいた。2週間以降だとコラーゲン膜はほぼ分解され、1カ月では肉眼的な残存は認めなかった。一方、シルク膜は2週間、1カ月と肉眼的に形態を保持していた。以上の結果から、生体内で骨膜として応用可能な強度を長期間維持できる事が示唆できた。 HE染色切片では、シルクシート、コラーゲンシート共に良好な組織誘導能が確認されたが、シルクシートの分解が遅いことが要因で、異物巨細胞も多く誘導されていた。そのため、新たな課題として異物巨細胞の出現しないようなシルクシートの開発の必要性が明らかとなった。すなわち、強度を保ちながら異物反応が生じないシルクシートの開発を計画している。異物反応は、シルクの不溶化の割合が大きいと出現しやすくなる傾向が判明したため、不溶化の割合を下げて、強度を維持した素材を現在作成中である。骨のscafoldへの応用実験は、適切なシルクシート開発後に予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人工骨膜にふさわしいシルクフィブロイン生体材料の条件検討が難航している。 人工骨膜(骨のscafold)として、ある程度の時間(おおよそ半年)吸収されないような材料を開発中だが、ミクロレベルで吸収期間が長くなると、異物巨細胞が出現することが明らかとなった。そのため適切な吸収期間や異物巨細胞が反応しないようなscafoldが確立しておらず、当初予定している骨の再生実験まで進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
組織内での異物反応の少ないシルクシートの開発が急務である。 不溶シルクの配合を調整して、生体適合性の良いシルクシートを開発予定である。生体適合性の良いシートの開発が終われば、骨膜への応用研究を、分子生物学的、組織学的に解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
生体適合性の良いシルク膜の開発に時間を要しているため、骨への応用研究がまだ行えておらず、次年度使用額が生じた。次年度使用分と今年度使用分を合わせて、生体適合性の良いシルク膜の開発と、骨への応用研究に研究費を用いる予定である。
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