2022 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージ-線維芽細胞の協調作用に着目した口腔癌の新規予防・診断標的の探索
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22K10217
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
重岡 学 神戸大学, 医学研究科, 助教 (20778716)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 舌癌 / 予防 / 早期診断 / 腫瘍随伴マクロファージ / がん関連線維芽細胞 / 発癌 / 歯周病 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性炎症は癌の発生や進展に影響を与える。常に外部からの様々な刺激にさらされ軽微な炎症性修飾が加わる口腔粘膜において、慢性炎症の制御は特に重要と考えられる。申請者は、口腔扁平上皮の発癌過程において慢性炎症細胞であるマクロファージが局在を大きく変化させ、「腫瘍細胞との密接なクロストーク」を形成することで腫瘍随伴マクロファージ(TAM)へと分化し発癌・癌進展に寄与する可能性を報告したが、発癌リスク因子との関連については不明である。一方、TAMとともに癌間質を構成する主な細胞にがん関連線維芽細胞(CAF)があり、創傷治癒過程で出現する活性化筋線維芽細胞と同様にα平滑筋アクチン(αSMA)を発現し癌進展を促進することが知られているが、発癌段階における詳細は明らかになっていない。 3ヶ年計画の初年度に当たる2022年度は、研究の端緒として神戸大学医学部附属病院病理診断システムから抽出した舌癌および舌白板症症例についてCAFマーカーの免疫組織化学的所見や口腔内特有の癌化リスク因子を含めた臨床病理学的情報に関するデータベースを再構築した。CAFマーカーの免疫組織化学では、癌胞巣間を充填する様に分布するαSMA陽性紡錘形細胞が確認されたが、一部の浸潤癌症例に限定的であった。舌癌微小環境中のCAFを培養系で再現すべく、骨髄由来間葉系幹細胞BM-MSCを舌癌細胞株SCC25と直接的に共培養した。共培養系から回収した培養上清で刺激したSCC25は運動能が亢進し、間葉系マーカーの発現が誘導された。さらには、癌化リスク因子として慢性炎症性疾患である歯周病に着眼した検討に着手した。マクロファージ様THP-1細胞とSCC25を用いた培養実験では、歯周病原菌Porphyromonas gingivalis由来lipopolysaccharideがこれらの癌細胞-TAM相互作用を増強することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
舌癌微小環境において癌細胞-CAF間クロストークの存在を示唆する理論的根拠が得られた。さらには、歯周病原菌が癌細胞-TAMの相互作用を増強する可能性を見出し、予防法開発の観点からも研究を進めることができた。これらの成果を踏まえて次年度以降の方針を打ち出すことができたため、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
舌癌微小環境において多細胞間クロストークにより特異な機能的分化を遂げたTAMに誘導される分子群の中から実地臨床(予防や早期診断)に有用なマーカーを見出すことを目標に研究を継続する。具体的には、SCC25との相互作用により誘導されるBM-MSCの形質変化を確認し、TAM様THP-1細胞(THP-1を用いたマクロファージ分化誘導に関する手法はこれまでの研究で確立済み)との共培養実験を実施する。ここでTAM様細胞に誘導される分子群をcDNAマイクロアレイにて網羅的に解析する。さらにはヒト舌の手術検体における候補分子群の発現を免疫組織化学的に解析し、歯周病重症度や癌細胞-TAM-CAFの位置関係との相関を検討することでin vivoにおいて重要となる候補分子を絞り込む。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症蔓延に起因する消耗器具や試薬の供給停滞・実験活動の制限により、本年度の支出額が減少し、次年度使用額が生じる結果となった。
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Research Products
(7 results)