2023 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージ-線維芽細胞の協調作用に着目した口腔癌の新規予防・診断標的の探索
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22K10217
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
重岡 学 神戸大学, 医学研究科, 助教 (20778716)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 舌癌 / 腫瘍随伴マクロファージ / 炎症性線維芽細胞 / 歯周病 / 予防 / 早期発見 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、舌癌微小環境におけるがん関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblast:CAF)の特異的機能分化を確認すべく、試験管内CAFモデルを作成した。近年では、ヒトのがんにおけるCAFの起源・機能は多様であることが報告されている。そこで舌癌微小環境におけるCAFの不均一性に着目して検討を進めることとした。申請者は前年度までの検討から、舌癌におけるCAFは浸潤癌にのみ高発現することを見出した。このことから、間質浸潤に伴う組織破壊に対し骨髄由来間葉系幹細胞BM-MSCが癌微小環境に動員された可能性を考えた。そこでBM-MSCを舌癌細胞株SCC25と間接的に共培養すると、増殖能亢進が確認されると同時に、複数の炎症性サイトカインの発現が誘導された。一方で、α平滑筋アクチン(alpha smooth muscle actin:αSMA)の発現は著しく減弱しており、αSMAにより特徴づけられる筋線維芽細胞的CAF(myofibroblastic CAF:myCAF)ではなく、炎症性CAF(inflammatory CAF:iCAF)様の形質を獲得していることが示唆された。人体舌癌組織におけるiCAFマーカーの発現を免疫組織化学的に検討すると、種々の悪性度因子に強い相関を示した。さらに興味深いことに、その局在がαSMA陽性myCAFと大きく異なることが明らかとなった。 さらには、発癌リスク因子に関する検討として、人体舌癌組織における歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis由来lipopolysaccharide(Pg-LPS)に着眼した検討を継続した。試験管内実験において、Pg-LPSはマクロファージ様THP-1細胞との共培養によって誘導されるSCC25の遊走能を促進した。口腔扁平上皮細胞におけるTLR4(Pg-LPS受容体)は発癌に伴い段階的に上昇し、リンパ節転移やCD163陽性マクロファージ浸潤との間に正の相関を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来、CAFは、αSMAなどの筋線維芽細胞マーカーを高発現する集団(いわゆるmyCAF)として一括りに考えられてきた。しかしながら本研究では、CAFの起源としてBM-MSCに着目した解析から、むしろαSMA発現の乏しいiCAF様形質の重要性を示唆する知見が得られた。発癌リスク因子に着眼した検討については、前年度から着手した試験管内実験に加えて、臨床検体を用いた解析からも歯周病原細菌由来LPSとマクロファージ浸潤の関与を支持する結果が得られた。 当初の計画では、既報告に基づきαSMAをCAFマーカーとした解析を予定していたため、研究計画に若干の変更が生じ、口腔癌におけるCAFモデルの作成に時間を要した。そのため、マクロファージとの協調作用の検討には至っていない。一方で、発癌リスク因子に着眼した検討は想定以上に進捗しており、次年度以降に実施する予防法・診断法開発の観点から研究が円滑に進む見通しが立っている。以上から、全体を総括して「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿った研究を推進する。iCAF様形質を獲得したBM-MSCとマクロファージ様THP-1細胞を共培養し、後者に特異的に誘導される分子群をcDNAマイクロアレイにより網羅的に解析する。重要分子の絞り込みについては、既報告のみならず、本年度の研究から得られた独自の知見(iCAF様BM-MSCが分泌するサイトカインやケモカインとの関連性)も参考に効率化を図る。絞り込まれた分子について、舌癌および舌白板症臨床検体のマクロファージにおける発現を免疫組織化学的に解析し、口腔扁平上皮の発癌に重要となる分子を抽出する。さらには、抽出分子を歯周病原細菌との関係性に着目して検討する。
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Causes of Carryover |
課題申請時はmyCAFとマクロファージのクロストークに着目した病理診断標的の探索を想定していたが、上述の如く、BM-MSCのiCAF様形質獲得機構に関する検討に方針を若干変更した。これに伴い、本年度はcDNAマイクロアレイの実施に至らず、次年度使用額が発生した。また、消耗品使用を予定より節約できたことも理由に挙げられる。 一方で、発癌リスク因子として歯周病原細菌由来LPSの関与を詳細に検討する機会が得られ、興味深い知見を収集することができた。研究成果の実地臨床応用について、当初想定していなかった新たな展望が開けたことから、研究成果の論文投稿・掲載に関する費用が当初の予定よりも増額する可能性が高いと判断し、次年度使用額を充当する予定とした。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Matrix Metalloproteinase 9 Induced in Esophageal Squamous Cell Carcinoma Cells via Close Contact with Tumor-Associated Macrophages Contributes to Cancer Progression and Poor Prognosis2023
Author(s)
Tsukamoto S, Koma YI, Kitamura Y, Tanigawa K, Azumi Y, Miyako S, Urakami S, Hosono M, Kodama T, Nishio M, Shigeoka M, Yokozaki H
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Journal Title
Cancers
Volume: 15(11)
Pages: 2987
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Biological and clinical significance of the YKL-40/osteopontin-integrin β4-p70S6K axis induced by macrophages in early oesophageal squamous cell carcinoma2023
Author(s)
Urakami S, Koma YI, Tsukamoto S, Azumi Y, Miyako S, Kitamura Y, Kodama T, Nishio M, Shigeoka M, Abe H, Usami Y, Kodama Y, Yokozaki H
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Journal Title
Journal of Pathology
Volume: 261(1)
Pages: 55-70
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] IFI16 Induced by Direct Interaction between Esophageal Squamous Cell Carcinomas and Macrophages Promotes Tumor Progression via Secretion of IL-1α2023
Author(s)
Azumi Y, Koma YI, Tsukamoto S, Kitamura Y, Ishihara N, Yamanaka K, Nakanishi T, Miyako S, Urakami S, Tanigawa K, Kodama T, Nishio M, Shigeoka M, Kakeji Y, Yokozaki H
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Journal Title
Cells
Volume: 12(22)
Pages: 2603
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] LPS from periodontal pathogen P.gingivalis enhances interplay of tongue cancer cell with macrophage via TLR42023
Author(s)
重岡 学, 鳥越陸矢, 横尾拓樹, 大森將貴, 塚本修一, 中西 崇, 山中啓太郎, 石原伸朗, 安積佑樹, 都 鍾智, 浦上 聡, 児玉貴之, 西尾真理, 狛 雄一朗, 横崎 宏
Organizer
第82回日本癌学会学術総会