2022 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍微小環境におけるPAR1を介した口腔癌の高度悪性形質獲得機構の解明
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22K10222
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川野 真太郎 九州大学, 歯学研究院, 教授 (00398067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 多市 九州大学, 歯学研究院, 共同研究員 (10897185)
中村 誠司 九州大学, 歯学研究院, 教授 (60189040)
金子 直樹 九州大学, 歯学研究院, 助教 (80805284)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / PAR1 / 浸潤 / 転移 / ΔNp63 / 上皮-間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の転移は、癌細胞の浸潤・遊走、免疫監視機構からの逃避、治療抵抗性など複数の過程を経て成立するが、これらは癌細胞と腫瘍微小環境構成細胞との相互作用によって進行することが知られている。しかしながら、浸潤・転移および治療抵抗性などの悪性形質獲得を規定する遺伝子の同定には至っていない。本研究は、口腔扁平上皮癌(OSCC)の浸潤先端部の癌細胞、癌関連線維芽細胞(CAF)、および腫瘍随伴マクロファージ(TAM)に共通して発現しているprotease-activated receptor (PAR) 1に着目し、その機能を解析することによって、腫瘍微小環境において癌細胞が高度悪性形質を獲得する分子機構を明らかにしようとする試みである。 まず、OSCC生検標本を用いて、浸潤先端部におけるPAR1の発現を免疫組織学的に検索した。癌細胞に着目してPAR1の発現を検索すると、発現が全く認められない症例から、ほとんど全ての細胞で発現しているものまで様々であった。一部の症例では癌胞巣を取り囲む間質細胞にもPAR1の発現を認めた。これらのPAR1の発現様式から、全症例をGroup A:腫瘍細胞及び間質細胞がともに陰性、Group B:腫瘍細胞が陰性かつ間質細胞が陽性、Group C:腫瘍細胞および間質細胞が陽性の3群に分類した。そこで、臨床所見ならびに病理組織学的所見との関連を検討したところ、Group Cは、Group A及びGroup Bと比較して組織学的悪性度の高い症例が多く、頸部リンパ節転移の発生頻度が有意に高かった。さらに、疾患特異的累積5年生存率はGroup Cが最も低かった。これらの結果より、OSCC浸潤先端部の腫瘍細胞ならびに間質細胞におけるPAR1の強発現がOSCC浸潤様式、分化度などの組織学的悪性度へ影響を与え、その結果としてOSCC患者の予後不良に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時、令和4年度については、以下の検討を行う予定であった。 1)口腔扁平上皮癌(OSCC)組織におけるPAR1およびΔNp63の発現の検索(目標症例300例) 現在、症例数は200例であり、概ね計画通りに進んでいる。ΔNp63との二重染色も同時進行で行っている。 2)OSCC細胞株におけるPAR1およびΔNp63の発現の検索 当教室にて保有している5種類のOSCC細胞株(SQUU-A、SQUU-B、HSC-2、HSC-3、SAS)を用いて、PAR1およびΔNp63の発現をreal-time PCR法にて検索を行っており、概ね計画通りに進んでいる。現在、実験結果について統計学的解析を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、令和4年度の追加実験を行うとともに、以下の項目について研究を推進する予定である。 1)PAR1の発現抑制がOSCC細胞の増殖、分化、浸潤・遊走能に与える影響の検討 siRNA法によるPAR1ノックダウンが、OSCC細胞の増殖、分化、浸潤・遊走能に与える影響について検討する。それぞれMTT assay、invasion assay、wound healing assayにて検討する。また、各種上皮系マーカー、間葉系マーカー、およびEMT関連遺伝子の発現に与える影響についてreal-time PCR法 immunoblot法にて検索する。 (令和6年度) 1)CAFおよびTAMとの共培養がOSCCの浸潤・遊走能に与える影響の検討についても検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19により、当該分野の研究員ならびに大学院生が研究に従事する時間が大幅に制限されたこと、国内外への学会出張も制限を受けたことなどが差額が生じた要因と考えられる。昨年度に実行予定であった癌細胞を用いた機能解析実験は次年度に持ち越し、研究を進めていく予定である。
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[Journal Article] Prediction of nodal metastasis based on intraoral sonographic findings of the primary lesion in early-stage tongue cancer2023
Author(s)
S. Kawano, T. Hattori, Y. Mikami, T. Chikui, T. Kawazu, T. Sakamoto, Y. Maruse, S. Tanaka, E. Hamada, M. Hiwatashi, Y. Shiraishi, K. Oobu, T. Kiyoshima, S. Nakamura
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Journal Title
International Journal of Oral & Maxillofacial Surgery.
Volume: 52
Pages: 515-523
DOI
Peer Reviewed