2022 Fiscal Year Research-status Report
SARS-CoV-2に対する漢方薬による創薬開発基礎研究
Project/Area Number |
22K10324
|
Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
王 宝禮 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (20213613)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 泰弘 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (00339136)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | COVID-19 / SARS-CoV2 / 漢方薬 / 急性呼吸窮迫症候群 / 抗炎症作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型感染症コロナ感染症(COVID-19)は、西洋医学的には抗ウイルス薬と抗炎症薬の併用によって行われる。一方、東洋医学においてCOVID-19に対して中医薬、いわゆる漢方薬の臨床報告が相次いでいる。しかし、その薬理作用のメカニズムの解明はない。本研究では、1)COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の感染阻害、2)SARS-CoV-2誘発性炎症の抑制、に関わる有効な漢方薬・生薬の探索とその詳細な作用機序を解明する。これにより、漢方薬及びその生薬成分によるCOVID-19の治療薬開発を目指す基礎研究である。本実験に用いる漢方薬において、中国ではCOVID-19の軽症、中等症、重症の幅広い範囲に「清肺排毒湯」というが適用されている。清肺排毒湯は、漢代の張仲景が著した『傷寒雑病論』にある、外邪によって引き起こされる病に対する四つの名処方「麻杏甘石湯、射干麻黄湯、小柴胡湯、五苓散」を組み合わせたものが基本となっている。臨床研究では清肺排毒湯投与患者701症例のうち、130 症例が治癒および退院し、51 症例の臨床症状が消失、268 症例の症状が改善し、212例が悪化せず安定した症状改善を示したと報告されている。COVID-19に対する清肺排毒湯の有効な治癒率は 90%以上との報告があった。一方、本年になり、本邦では葛根湯、桔梗石膏、麻黄湯、小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏が有効である臨床研究が報告されたことから、これらの漢方薬の抽出作業に入った。この抽出作業は順調に進行している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
中国では早期から清肺排毒湯がCOVID-19に対して有効性を明らかにした。清肺排毒湯は漢代の張仲景が著した『傷寒雑病論』にある、風寒邪によって引き起こされる外感熱病=感染症に対する処方である、麻杏甘石湯、射干麻黄湯、小柴胡湯、五苓散を組み合わせたものが基本とされている。基礎方剤:麻黄 9g、炙甘草 6g、杏仁 9g、生石膏 15~30g(先煎)、桂枝 9g、澤瀉 9g、猪苓 9g、白朮 9g、茯苓 15g、柴胡 16g、黄 6g、姜半夏 9g、生姜 9g、紫9g、款冬花 9g、射干 9g、細辛 6g、山薬 12g、枳実 6g、陳皮6g、香 9gである。 清肺排毒湯は日本のエキス製剤にはなく、中国からの輸入を期待していたが、社会状況から入手が困難になり、日本で生薬の抽出作業にはっいたため、実験の進捗状況が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
清肺排毒湯の入手が困難なことから、日本東洋医学会がCOVID-19に有効であると臨床医学的に発表した6漢方薬で10実験を実施することにする。試験漢方薬として葛根湯、桔梗石膏、麻黄湯、小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏、桔梗湯とする。これらの漢方薬は生薬成分は清肺排毒湯に似ている。そのため研究目的として1)SARS-CoV-2の感染阻害、2)SARS-CoV-2誘発性炎症の抑制、に関わる有効な漢方薬・生薬の探索とその詳細な作用機序を解明し、これにより漢方薬・生薬によるCOVID-19の治療薬開発を目指すことに期待できる。
|
Causes of Carryover |
従来ターゲットとした漢方薬の抽出がうまくいかず、研究が進行状況に支障がでていたため、次年度使用額が生じた。しかし、すでに抽出に成功し安定供給できることが可能となったため、次年度は本年度行う予定であった研究に使用する予定である。
|