2022 Fiscal Year Research-status Report
免疫チェックポイント阻害を応用したヒトγδT細胞による口腔癌免疫療法の開発
Project/Area Number |
22K10325
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
辻 要 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (80632083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堂前 英資 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (50454559)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Vγ9Vδ2 T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Vγ9Vδ2T細胞が発現する免疫チェックポイント分子には、PD-1やCTLA-4に加えてBTLAが重要な役割を果たすことが知られているが(Dardenne JG, Blood, 2013)、Vγ9Vδ2T細胞の免疫チェックポイントは、従来のαβT細胞で得られた知見をそのまま適応できるか否か不明な点が多い。さらにヒト口腔癌細胞による免疫チェックポイント阻害を介したVγ9Vδ2T細胞の抑制に関してはほとんど明らかになっていない。 ヒト口腔癌細胞株10種類を用いて、細胞表面へのPD-L1発現をFACSで検証したところ、いずれも検出できないか低レベルでの発現が確認できる程度であった。同一の細胞株を用いた他の研究者による報告ではウエスタンブロット法でタンパク質レベルの発現が認められていることから、細胞内での合成・分解制御や細胞表面への移行などの制御によって細胞表面での検出ができなかったと考えられる。そこで、PD-L1の発現制御に関わる因子を検討した。IFNγや抗癌剤として用いられるCDK阻害剤はPD-L1の発現を促進することが知られている。これらの癌細胞の微小環境に影響を及ぼす因子を用いてPD-L1の発現を検討したところ、ヒト口腔癌細胞株での発現上昇が確認できた。 また、コレステロール代謝がPD-L1の機能に影響を及ぼすことが最近明らかになった(Wang, Q, Science ADVANCES, 2022)。現在、抗原刺激あるいはサイトカイン刺激下における、Vγ9Vδ2T細胞の活性化と機能に、口腔癌細胞株の発現するPD-L1が及ぼす影響を、IFNγ、CDK阻害剤及びコレステロール代謝に影響を及ぼす薬剤を用いて検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養口腔癌細胞株におけるPD-L1発現制御に基づいて、Vγ9Vδ2T細胞の活性化に及ぼすデータが得られている。また、抗癌剤耐性口腔癌細胞株を複数樹立し、これらの細胞のPD-L1発現制御が親株と異なることを確認した。抗癌剤耐性癌細胞に対する、PD-L1阻害剤を用いた癌細胞抑制における特異性に関するデータを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
Vγ9Vδ2T細胞による癌細胞の抑制は、癌細胞内のリン酸抗原の蓄積が必要である。この誘導に関わるコレステロール代謝とPD-L1発現の関係が明らかとなったことから、癌細胞によるVγ9Vδ2T細胞の活性化と抑制の双方に関与するコレステロール代謝の及ぼす影響を検討する必要ができた。これまでの実験で明らかにしてきた、口腔癌細胞のPD-L1発現に関する知見をもとに、コレステロール代謝への薬剤を用いた介入がVγ9Vδ2T細胞による口腔癌抑制に及ぼす影響を詳細に検討する。さらに樹立した抗癌剤耐性細胞株のVγ9Vδ2T細胞による癌抑制に及ぼすにPD-L1阻害を検証する。
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Causes of Carryover |
科研費以外に利用できる研究室の研究費の配分が追加であり、そちらを優先して利用したため次年度使用額が生じた。次年度使用額は、検証の必要性が高まったコレステロール代謝とPD-1/PD-L1シグナルとの関連を検討するために、コレステロール代謝を調節する転写因子の同定に必要な抗体の購入費用に使用する。
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