2023 Fiscal Year Research-status Report
医療通訳者を含むチーム医療における協働モデルの構築
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22K10367
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
濱井 妙子 静岡県立大学, 看護学部, 講師 (50295565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 浩昭 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (30208160)
永田 文子 淑徳大学, 看護栄養学部, 准教授 (30315858)
東野 定律 静岡県立大学, 経営情報学部, 教授 (60419009)
大野 直子 順天堂大学, 国際教養学部, 准教授 (90730367)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 医療通訳 / 通訳の役割 / チーム医療 / 患者安全 / 医療通訳の質 / リスクマネジメント / 外国人診療 / コミュニケーションの相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、2017年と2019年、2020年の2月~3月の75日間に収集した外国人患者受入れ拠点病院で院内通訳者または患者が連れてきたアドホック通訳者が介在した診療場面の音声データを用いて、通訳者が元の発言(原発言)を変更して訳出した通訳変更の頻度と特徴を量的分析と質的分析を組み合わせて行った。その結果、院内通訳者は先行研究に比べてインシデントにつながる可能性がある通訳変更が少ないこと、必要に応じて外国人患者と医師にわかりやすく通訳を変更したり、補足説明を加えたりして、患者の理解を促進し、医師と患者を繋いでいたことが明らかになった。また、質的分析により、医療通訳者の介入は患者・医師・医療通訳者間のコミュニケーションの相互作用を促進し、ポジティブな臨床結果を支援することがわかったが、訓練をうけていないアドホック通訳者にはその機能はみられなかった。さらに、臨床現場における医療通訳の質の評価方法に関する文献レビューの結果から提案した医療通訳の質評価の概念枠組みを、実際の臨床データを用いて評価し、新たな概念枠組みを考案した。これらの研究成果は、学術雑誌の日本ヘルスコミュニケーション学会誌、国際保健医療、Patient Education and Counselingに採択され、公表された。現在、アドホック通訳者に関する事例分析結果を投稿論文にまとめている。あわせて、チーム医療における医療通訳者の役割と、医療者と医療通訳者の協働方法に関する先行研究レビューを行い、医師と医療通訳者を対象にしたフォーカス・グループ・ディスカッションの実施にむけて研究計画書を作成し、研究代表者の所属機関の研究倫理審査委員会に申請中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
診療場面の音声データのポルトガル語部分の発言内容ならびに通訳変更の部分に関する確認と協議に予想以上の時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、チーム医療の一員として医師と医療通訳者が効果的に協働する方法を探索する目的で、医療通訳者の活用経験がある医師と医療通訳者を対象にフォーカス・グループ・ディスカッションを実施する。研究方法は、2017年、2019年、2020年の調査対象の外国人患者受入れ拠点病院で、いずれかの調査に参加・協力していただいた医師と医療通訳者を対象に、それぞれの専門職種別にフォーカス・グループ・ディスカッションを実施する。一つのグループメンバーは3人~4人とする。調査は、対象者の属性に関する質問紙調査とインタビューガイドに基づいたフォーカス・グループ・ディスカッションを実施する。ディスカッションの内容は、医師には①医療通訳者の行動規範を示した上で、医師が医療通訳者に期待する役割、②チーム医療の中で医師と医療通訳者が協働するための方法(具体例)、医療通訳者には①チーム医療の一員として、医療通訳者にどんな役割が期待されているか、②チーム医療の中で医師と医療通訳者が協働するための方法(具体例)、とそれぞれ2点ずつとする。データ収集の方法は、Web会議ツールを用いてグループ・ディスカッションを実施する予定であるが、日程調整が難しい場合は個別インタビューに切り替える。また、対象医療機関が対面を希望する場合は、それに従う。対象者の許可を得て、ディスカッション内容は聞き間違いがないようにICレコーダーで録音し、逐語録を作成し、質的に要約的内容分析をする。本研究は、研究代表者の所属機関の研究倫理審査委員会の承認ならびに学長の研究計画実施の許可を得て実施する。研究対象病院内で別途、臨床研究倫理審査が必要と判断された場合にはそれに従う。
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Causes of Carryover |
今年度の計画は研究計画実施に向けての準備期間としていたことと、学会等の旅費の捻出がなかったため、予定よりも費用がかからなかった。残額は、次年度の配分額にあわせて、研究に必要な経費として有効に使用していく。
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