2023 Fiscal Year Research-status Report
大規模災害時に備えた地域薬局の医薬品等の新たな備蓄方法に関する研究
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22K10447
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
光岡 俊成 北海道科学大学, 薬学部, 教授 (70909621)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大規模災害 / 北海道地域 / 薬局 / 医薬品備蓄 / BCP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,薬局の開設者または管理薬剤師を対象にした大規模災害に備えた医薬品等備蓄の意識やBCPの準備,負担感に関する調査結果から,それらに影響を与える背景を探ることで,大規模災害に備えた医薬品等備蓄の体制を構築する際の課題を明らかにした. ①大規模災害に備えた医薬品等備蓄の必要性があるとする回答は36.1%であり,BCPを準備しているとの回答も26.8%にとどまった.北海道では巨大地震が想定される状況下災害時に向けた医薬品等備蓄の対策を急ぐ必要があることが示唆された. ②大規模災害に備えた医薬品等備蓄の必要性の意識およびBCPを準備している割合は,勤務薬剤師数,グループ薬局の店舗数が多いほど高く,薬局管理者等の災害医療経験の有無に差を認めなかった.経営規模が大きいほど組織全体の課題として対応している傾向にある可能性がある. そのため, 経営規模が小さい地域薬局を含めた地域全体の体制で,医薬品等備蓄の体制整備を進める必要があることが示唆された. ③負担感が最も高かったのは期限切等による廃棄コストであった.回転備蓄を行う上で行政施策や地域の関係者の負担で必要なイニシャルコストや保管費用を支援するなど最低限のコストで対応できるかを検討することも考えられる.また,薬局管理者等に「災害医療経験」がある場合には負担感が低く,薬局管理者等の知識や経験が負担感に反映された.したがって,現場の薬局管理者等の負担感を減らすためには,災害医療対応の講習や啓発も必要と考えられた.加えて規模が大きい薬局ほど他機関との連携に関する業務負担が増加すると意識する薬局が多く,個別の店舗の薬局管理者等に負担が偏らないよう例えば行政による連携体制の構築支援も考えられた. 特に1人薬剤師の薬局が多い地域では,より広域での連携も考慮する必要があることが示唆された. 今後、本研究の成果を踏まえ回転備蓄等の実証研究を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始1年目の成果は北海道全域の薬局を対象に大規模災害に備えた薬局の医薬品備蓄の現況と課題を明らかにすることができたことである. その結果は論文として公表済みである(薬局薬学 2024;16:29-40). 2年目では, 北海道庁と北海道薬剤師会が進めている薬事災害コーディネーターの構築と併せて医薬品備蓄の仕組みを検討中である. 関係者も多く当該仕組みを構築することに時間がかかっていることが現況である. その最中に本年1月には能登地震が発生しており, 本地震災害での経験も調査し,医薬品供給の問題点を精査する必要性がある.
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Strategy for Future Research Activity |
本年1月に発生した能登地震における医薬品供給の問題点を精査し, 大規模災害に備えた医薬品備蓄のあり方を関係者と一緒に検討する予定である. また, これまで検討項目になかった医薬品卸の役割や自衛隊との協力も合わせて検討し, 医薬品備蓄のあり方を整理することを考えている.
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Causes of Carryover |
残額は実証研究を行う経費として算定していたものを含んでいる. 昨年度は北海道薬剤師会等が進める薬事コーディネーター創設の関係者との調整が遅れていることや能登地震の発生もあり, 一部計画の変更が必要であり, 計画の一部を2024年度にずれ込むことになったため,次年度使用額が生じる結果となった.
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