2023 Fiscal Year Research-status Report
ヒトゲノム編集に関する包摂的な社会的議論とポリシー形成のための基盤的研究
Project/Area Number |
22K10465
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 和人 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10202011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古結 敦士 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70939040)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヒトゲノム編集 / ガバナンス / 倫理的課題 / ステークホルダー / 患者 / 包摂性 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の遺伝子を効率よく改変できるゲノム編集技術は、生命科学・医学研究分野における重要な技術として利用される一方で、この技術をどこまで人に応用してよいかという倫理的・社会的課題が提示されている。過去約10年近く、各国の政府や研究コミュニティ、国際機関などがそれらの課題の検討を行ってきたが、検討や議論のプロセスにおいてさまざまな関係者の十分な意見が反映されていないという課題がある。本研究では、日本での議論と国際的議論の両方を対象にし、専門家ではない患者・市民の関与や、国際的な議論に多様な国や地域の意見や文化的背景が反映されているかを調査することとした。 令和5年度においては、主として国内における状況の分析を進めた。具体的には、希少疾患患者・家族・関係者を対象に、ゲノム編集の生殖細胞系列への臨床応用(HHGE、Heritable Human Genome Editing)に関する意見を集めるワークショップを、オンライン形式で6月から9月にかけて3回実施した。約10の遺伝性疾患の患者・家族・関係者、合計約30名が参加した。手法としては、中川・八木らの「論点抽出カフェ」の方法を用いて、ゲノム編集の利用を仮想的に描いたシナリオを提示したうえで、自由な観点から付箋に書きだす方法で意見を出してもらった。シナリオは、遺伝性疾患を持つカップルが子供を設けるに当たって「世代を越えたゲノム編集」を行うことを検討している、という状況を描いたものを用意した。得られた意見は、KJ法を用いて分析・整理した。まとめられた結果には、患者や家族にとってHHGEを実施することの影響や、技術に対する不安や懸念、倫理的・社会的課題とガバナンスのあり方、などを含む5つのカテゴリーにまとめられた。現在、それらの結果を、令和6年度内に論文として投稿する準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内の状況を把握、分析するためのワークショップは実施できたが、令和4年度に実施した国際的状況を把握するためのインタビュー調査の内容を論文として仕上げる作業が遅れている。また、計画した国際ワークショップは実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
海外の状況については、令和4年度から5年度にかけて進めてきたインタビュー調査の結果を論文として投稿する予定。国内については、ワークショップの結果をまとめた論文を投稿する予定。さらに、「何が実現した際に包摂性が強化されたとみなせるか」といった包摂性に関する概念の整理と明確化について取り組んでいく。実践に役立つフレームワークの作成にも取り組んでいく予定。
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Causes of Carryover |
予定していた海外からの研究者を招いた国際ワークショップを開催しなかったため。令和6年度に開催の予定。
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