2022 Fiscal Year Research-status Report
マイクロRNAの網羅的解析を用いた高分子化合物による肺障害機序の解明
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22K10499
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
東 泰幸 産業医科大学, 医学部, 診療助教 (00910928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 千夏 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (00461583)
友永 泰介 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (20721707)
森本 泰夫 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (30258628)
東 秀憲 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (40294889)
矢寺 和博 産業医科大学, 医学部, 教授 (40341515)
和泉 弘人 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 准教授 (50289576)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | micro RNA / エクソソーム / 架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物 / じん肺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物(アクリル酸系ポリマー)による持続性の肺炎症・線維化にどのようなエクソソーム内包microRNAが関与するかどうかを解明することである。 当該年度に実施した研究の成果については、アクリル酸系ポリマー(分子量 76.8万、架橋構造あり)を13週間、対照群と2つの濃度(0 mg/m3、0.2 mg/m3、2.0 mg/m3)で吸入ばく露させたラットの解剖を行った。観察期間はばく露終了後3日、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月に設定した。解剖時に気管支肺胞洗浄液を回収し、その検体の一部を今回の研究で用いるために取り分け、エクソソームの抽出を行った。エクソソームの抽出方法は、当研究グループからの以前の報告(Oncol Rep. 2020 Nov;44(5):2198-2210.)を参考に行った。 今回の研究の意義・重要性については以下の通りである。最近本邦でアクリル酸系ポリマーによる進行性の肺障害が発生し、それは石綿や結晶質シリカの吸入により引き起こされる従来のじん肺よりも短期間でかつ重篤な肺障害を引き起こしたことが報告されており、労災認定もされた。特にアクリル酸系ポリマーは粘性や吸水性などの特性を持ち、その特性の違いを利用して様々な日用品や、食品や医薬品の添加物として用いられており、製造する作業者だけでなく一般消費者にとっても生体影響が懸念される。ただアクリル酸系ポリマーがどのようにして進行性の肺障害を引き起こしたかの機序については不明なところが多く、現状の課題であると考えている。 炎症や線維化の持続・進行に関してはエクソソーム内のmicro RNAによる転写制御の関与の報告もあり、アクリル酸系ポリマーによる肺障害にもエクソソームならびにmicro RNAが関与しているのではないかと考え、今回の研究を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットに対する架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物を用いた13週間の吸入ばく露試験は無事終了しており、またラットの解剖も既に一部施行されている。また解剖の際に気管支肺胞洗浄液を回収し、その検体の一部を今回の研究で用いるために取り分け、その検体からエクソソームの抽出も行っている。エクソソームの抽出方法は、当研究グループからの以前の報告(Oncol Rep. 2020 Nov;44(5):2198-2210.)を参考に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は抽出したエクソソームからさらに内包されているmicro RNAの精製を行い、マイクロアレイによる網羅的な解析を行うことで、架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物の吸入ばく露により増減した気管支肺胞洗浄液中のmicro RNAをピックアップし、そのmicro RNAが制御するmRNAと肺障害性の関係を総合的に検討し、当該物質による炎症や線維化に関与する遺伝子を究明する。
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Causes of Carryover |
令和4年度は研究に大きな問題が発生せずに順調に進んだため、消耗品等に少額の余剰金が発生した。試薬や消耗品が高額であるため、余剰金はこれらの購入に使用する予定である。
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