2022 Fiscal Year Research-status Report
環境化学物質によるTRPA1チャネル活性化の分子機構解明
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22K10515
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Research Institution | Yokohama College of Pharmacy |
Principal Investigator |
香川 聡子 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (40188313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神野 透人 名城大学, 薬学部, 教授 (10179096)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヒトTRPA1 / 環境化学物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、環境化学物質による侵害刺激受容体・TRPA1活性化の分子機構解明を目的として、in vitro 実験によるTRPA1活性化の定量的解析結果とドッキングシミュレーションによって得られるドッキングスコアによるin silico 評価結果を合わせて解析することにより、TRPA1に親和性の高い化学物質の特徴と、TRPA1分子の標的部位を抽出することを目的とする。本年度は、化粧品や家庭用品などに広く使用されているイソチアゾリノン系抗菌剤を対象とした。in vitro評価としてヒトTRPA1を恒常的に発現するFlp-In 293細胞株を用いて、細胞内へのカルシウムイオンの流入を指標にイオンチャネル活性化を定量的に解析した。in silico 評価としては、Protein Data BankよりヒトTRPA1の立体構造モデル(PDB ID:6X2J, 6PQO)をダウンロードし、Molecular Operating Environment(MOE 2022.02,MOLSIS Inc.)を用いて、構造最適化後にドッキングシミュレーションを行い、ヒトTRPA1とイソチアゾリノン系抗菌薬の分子間で相互作用する部位の探索を行った。in vitro評価結果では、今回評価対象とした5種イソチアゾリノン系抗菌薬は、いずれもヒトTRPA1を活性化することが判明した。in silico 評価結果では、評価した5種イソチアゾリノン系抗菌薬がヒトTRPA1の非共有結合性アゴニストの結合部位であることが指摘されているTyr840、Glu864、Ser887、Gln940のいずれか、あるいは複数の部位と相互作用する可能性が示された。特に最もEC50値が低い2Cl-OITについては、共有結合性アゴニストの結合部位であるCys621を修飾する可能性も示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において、化粧品や家庭用品などに広く使用されている抗菌薬を対象としてin vitroおよびin silico評価によって侵害刺激受容体TRPA1の活性化とそのメカニズムについて検討し、その結果を学会にて発表した。1年目としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度のin silico評価によって示されたヒトTRPA1におけるイソチアゾリノン系抗菌薬の標的部位、すなわちTyr840、Glu864、Ser887あるいはGln940をAlaに置換したヒトTRPA1発現細胞株を用いて活性化能の変化を検討し、イソチアゾリノン系抗菌薬のヒトTRPA1結合部位に関するin silico 評価結果を検証する。さらに、2019年に室内濃度指針値が改定されたフタル酸エステル類等を検討対象に加え、フタル酸エステル類によるヒトTRPA1の活性化に関与する候補アミノ酸をin silico 評価により同定するとともに、アミノ酸変異を導入したヒトTRPA1発現細胞株を用いるin vitro評価によってTRPA1活性化に重要な役割を果たす領域を特定する。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた解析用ソフトウェアが当該年度については不要となったため、次年度使用額が発生した。繰り越し分は次年度以降in silico解析用ソフトウェアの購入・使用料等に充当する。
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