2022 Fiscal Year Research-status Report
粉じんの肺内での表面粗さの変化が肺毒性に及ぼす影響とその変化要因に関する基礎研究
Project/Area Number |
22K10519
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Research Institution | Japan Organization of Occupational Health and Safety Japan Bioassay Research Center |
Principal Investigator |
後藤 裕子 独立行政法人労働者健康安全機構 日本バイオアッセイ研究センター(試験管理部、病理検査部), その他部局等, 室長補佐 (80722090)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 粉じん / 表面粗さ / 肺毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】粉じんの吸入による肺線維症等の職業性肺疾患は、不可逆的に進行し治療が難しいため、労働者の健康を守る上で重大な問題である。また、近年のナノマテリアル等新素材の開発に伴い、これらの肺への影響も危惧されており、リスクの予測と予防が重要である。一方で、粉じん原体の表面粗さは毒性を評価する重要因子であるが、曝露後の肺内で時間経過と共に生じる表面粗さの変化の要因や肺毒性との関係は不明である。本研究では、表面粗さの変化の要因となる粉じんの特性および肺内で変化する表面粗さの肺毒性における役割を解明することを目標に、本年度は雄性F344ラットに酸化アルミニウム粒子を投与し、経時的な表面粗さの変化の観察および肺毒性の評価を行った。 【結果】雄性F344ラット(n=6)に、PBSに懸濁した酸化アルミニウム粒子(40-50nm、富士フイルム和光純薬)を単回気管内投与(100mg/匹)し、4週後、13週後、26週後に肺と気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取した。肺を病理組織学的解析に供したところ、4週後から気腔内へのタンパク様の沈着及び間質への粒子貪食マクロファージの集簇が確認され、13週後には肺胞上皮の過形成や間質でのコラーゲン繊維の増生が認められた。しかしながら26週後には気腔内沈着物および粒子のクリアランスが進み、病態の進行は認められなかった。一方で、BALF中の酸化アルミニウム粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察を行ったところ、4週後から26週後まで原体と比較して変化が見られなかった。 【今後の検討課題】BALF中では酸化アルミニウム粒子の表面に変化が見られなかったため、肺病変部分の酸化アルミニウム粒子の表面をSEMにより観察し、肺内での変化と肺毒性について検討を行う。また、酸化アルミニウム粒子以外の粉じんについても同様に行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験系は機能しているが、粉じんの観察条件の検討等に時間を要したため、観察等の解析にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
肺病変部分の酸化アルミニウムの表面を観察し、肺内での変化と肺毒性について検討を行うとともに、酸化アルミニウム以外の粉じんについても同様に検討を行い、粉じんの表面変化の有無と表面特性の関係性、メカニズムについても検討を行う。また、粉じんの表面変化の数値化についても検討する。これらを通して、肺内で変化する粉じんの表面粗さの肺毒性における役割を解明する。
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Causes of Carryover |
今年度は観察条件の検討等に時間がかかり、解析が予定より進まなかったため、次年度使用額が生じた。令和6年度も昨年度に引き続き粉じん表面の観察および肺毒性評価等に必要な試薬、消耗品等を計上する。
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Research Products
(1 results)