2023 Fiscal Year Research-status Report
『みえる被災』『みえない被災』:震災前後で生じた地域資源格差と中長期的健康影響
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22K10532
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
坪田 恵 (宇津木恵) 帝京大学, 医学部, 講師 (20419998)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 地域資源 / 居住形態 / 健康 / 中長期的影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
被災直後より継続的に実施されている被災地域住民追跡研究「岩手県における東日本大震災被災者の支援を目的とした大規模コホート研究~Research project for prospective Investigation of health problems Among Survivors of the Great East Japan Earthquake and Tsunami Disaster (RIAS Study)」の対象地区において,地域における人的・物的資源の震災前後のデータをとRIASの健康調査経年データと紐付けを行うことで,『みえる被災』『みえない被災』で生じた地域資源格差が心身の健康に及ぼす中長期的影響を縦断的に検討することを目的に実施している. ①RIAS Studyで収集した発災直後からの居住場所,滞在期間についての移動を記した詳細な記録データから,発災から現在の住処に至るまでの住居移転の変遷の類型化を試みた.最終的な恒久住宅への移転までに複数回の移転を経験しているものをはじめとする多様な変遷が明らかとなった一方,10年目調査においても未だ住居が定まっていないものもうかがえた.現在その中でも主要な変遷パターンにおける背景因子や特徴把握のための準備を行っている. ②地域資源格差の基礎資料の一部として,現在の住居形態からみた震災直後からの身体的,社会心理的側面の変化(推移)を検討した.被災なし,および被災はしたものの震災前と同じ土地に居住している群と比較し,元の土地からの移動を余儀なくされた群で新居再建,入居後も社会心理的指標での継続的な低下が認められた. ③自治体や住民から行った地域資源について聞き取りから,自治体自体が壊滅的被害を受けた市区においては,自治体活動自体が未だ活動が停滞しており,自治会,他の機関が草の根的支援で維持されている現状が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定通り,『みえる被災』『みえない被災』にかかわる地域資源の情報収集は行政,特に保健や健康活動,つながり関連については粗方収集が完了したと判断されたが,地域によりその活動に幅や差が認められ,かつ情報の保管様式もまちまちであったことから,その整理,体系化を進めていることろである.他方,自治体によっては未だ地域に根差した継続的な活動が困難な状況を抱えている現実もあり,住民ベースでの聞き取り,情報の整理を進めていく必要性を感じている. 既存データであるRIAS studyデータを使用した居住形態,住居の移動変遷の類型化においては,さらなるデータのクリーニング,主要な変遷パターンの整理を進めているところである.同じく,RIAS studyデータを使用した『みえる被災』『みえない被災』による地域資源や支援の受領差と健康影響については,震災前後で変化した社会的,身体的,心理的特徴の推移も考慮に入れた検討を進めている. 昨年度異動に伴う前職での倫理申請変更手続きに時間を要したが,本年度,無事,現職の倫理申請が終了したことから,学会発表,論文準備→発信の準備を順次進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
『みえる被災』『みえない被災』にかかわる地域資源の情報収集については,現地担当者,ならびに現地の県警の深い協力研究者との連携の元,地域で草の根的活動を行っている社会福祉協議会,自治会ベースでの聞き取り調査,情報整理を引き続き進めていく.またRIAS Studyに回答した一部の対象地区,対象者における聞き取り調査も併せて行い,調査票データからでは得られなかった震災直後から現在に至る前の移動変遷の詳細や周りとの関係の変化など質的な部分についてより踏み込んだ情報収集を行う予定である. 他方,既存データベースを土台として行っている居住形態,住居の移動変遷の類型化,および『みえる被災』『みえない被災』による地域資源や支援の受領差と健康影響については,論文投稿,学会発表を着実に進めていく.
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Causes of Carryover |
異動に伴う全職場での倫理申請変更手続きの遅延,本職場での倫理申請手続きにより,新規学会発表および論文投稿,現地での調査を差し控えていたため.倫理申請手続き終了後の今年度は論文準備および発表を積極的に行った.次年度においては国際学会を含む国内外への発信,論文発表をさらに加速させるとともに,現地での聞き取り調査を複数回行う計画である.
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[Journal Article] Association between an Antioxidant-Rich Japanese Diet and Chronic Kidney Disease: The Ohasama Study2024
Author(s)
M Tsubota-Utsugi, M Satoh, J Watanabe, J Takebayashi, T Oki, Y Tatsumi, K Asayama, M Kikuya, T Murakami, T Hirose, H Metoki, A Hara, K Nomura, A Hozawa, Y Tsubono, Y Imai, T Ohkubo.
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Journal Title
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
Volume: 31
Pages: 461~477
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Rapid weight change as a predictor of disability among community‐dwelling Japanese older adults2023
Author(s)
M Tsubota-Utsugi, K Tanno, N Takahashi, T Onoda, Y Yonekura,M Ohsawa,S Takahashi, T Kuribayashi, T Itabashi, F Tanaka, K Asahi, S Omama, K Ogasawara, Y Ishigaki, F Takahashi, A Soma, N Takanashi, K Sakata, T Ohkubo, A Okayama.
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Journal Title
Geriatrics & Gerontology International
Volume: 23
Pages: 809~816
DOI
Peer Reviewed
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