2022 Fiscal Year Research-status Report
子どもの健全な発達を支援する学校ビッグデータを活用した最適な保健指導方法の開発
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22K10550
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
相馬 優樹 弘前大学, 教育学部, 助教 (60792372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 央美 弘前大学, 教育学部, 教授 (00419219)
小笠原 悠 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (40809844)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 学校 / 健康診断 / 新体力テスト / 学習成績の状況 / 出席状況 / 保健室 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、子どもの変調の予測因子を探索するために必要なデータベースを作成するために、研究対象者である児童生徒が在籍する学校からデータを入手して分析するための手続きについて、研究倫理委員会で承認を得ることができた。学校は児童生徒に生ずる変調を解決するのに役立つデータが大量に蓄積されているものの、研究対象者が子どもであるため保護者への説明が必要であること、蓄積されているデータは児童生徒の個人名で管理されており個人情報保護の観点から取り扱いが難しいこと、データによって取り扱っている学校内の責任者が違い取りまとめが煩雑であることから、研究利用がこれまでされてこなかった。本研究においては、保護者へ研究及びオプトアウトについての説明文書の配布による研究の周知、研究責任者による研究対象者が在籍する学校内における個人を特定できる情報の削除業務により、学校に蓄積されたデータを研究に活用するために必要な手続きを開拓したといえる。 また、分析するためのデータベースを構築する上で、学校におけるデータの管理方法の今後の課題も見えてきた。第1に、学校における児童生徒の学籍の管理の方法であるが、現状児童生徒には在学中不変である個人識別符号(学籍番号等)が付与されておらず、事情により名字が変わった者や同姓同名の者の分析上の扱いが困難であることがわかった。第2に、データが収集された年度によって健康診断の診断名・保健室の来室理由・出席状況の管理方法・各教科の評価の観点が違っており、児童生徒の健康状態の経年変化を分析するためには専門的なデータ加工の知識が必要であることがわかった。学校現場においてSociety5.0を実現するにあたって蓄積されているデータの活用が求められていく中、このような課題を見つけられたことは学校に蓄積されたデータを活用した児童生徒が抱える問題の解決に貢献できるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では令和4年度の10月中にデータベースの構築を終え、令和5年3月に分析結果に関する学会発表を行う予定であった。しかし、データ提供を受ける小学校におけるデータの収集にあたり、在校生と卒業生併せて9年間分の健康診断・新体力テスト・学習成績の状況・欠席日数・保健室の利用状況のデータ集約を、小学校所属の関係教員に依頼して提供を受ける必要があり、小学校内部でそれらのデータを集約するのに計画していた以上の時間を要した。また、個人情報保護の観点で氏名等個人を特定できる情報を学校外に持ち出すことができない制約上、提供を受ける膨大なデータを研究責任者が研究対象者が在籍する学校に出向いて学校内で個人を特定できる情報の削除を行わなければならなかったため、さらに時間を要してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の遅れはあったものの、本研究課題を遂行するために用いるデータベースの構築は令和4年度内で完了している。今後は10月31日~11月2日に実施される日本公衆衛生学会における発表を目指し、5月までに保健室利用データを用いた分析結果を学会抄録にまとめ、その内容について日本学校保健学会の学会誌である学校保健研究に投稿する。 同時並行で、本研究課題で作成したデータベースの基本統計量をまとめ、焦点を当てる子どもの変調を決定し、その変調を予測する因子の抽出を多変量解析などで行う。分析結果については、Preventive Medicine誌(impact factor: 4.637)や Journal of Adolescent Health誌(impact factor: 7.898)等公衆衛生系の国際誌への掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
令和4年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、本研究課題に関連する学会の多くがリモートでの開催となったため、旅費による支出が少なくなったことが理由である。また、人件費や謝金についても、想定していたよりも高度な技術がデータ整理に必要であり、作業の多くの部分を研究責任者自身で行うこととなったため、人件費が予定よりも少なくなった。 次年度使用額については、今後本研究課題に関する論文を2編国際誌に投稿した上でオープンアクセスの手続きを行う予定であるが、円安の影響で当初計画していた25万円よりもオープンアクセスに高額の費用が必要になる(40万円程度)ことから、計画よりも足りない分の補填に使用する。また、和雑誌への掲載料についても、次年度使用金を充てる予定である。
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