2023 Fiscal Year Research-status Report
4つのビッグデータを統合した薬剤耐性菌の疾病負荷に関する研究
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22K10597
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
矢原 耕史 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 室長 (70542356)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 薬剤耐性 / 疾病負荷 / JANIS / サーベイランス / DPC / 疫学 / MRSA / 保菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本の主要な薬剤耐性菌を対象として、4種類(菌の薬剤感受性の検査結果、耐性菌感染症の発症患者、医療行為歴と患者予後、菌株のゲノム)のビッグデータを統合解析し、保菌者と発症者を区別した上で、薬剤耐性菌の疾病負荷と医療コストに関する定量的なエビデンスを菌種ごとに明らかにすることを目指している。2023年度は、4種類のビッグデータのうち、各医療機関で行われている全ての細菌検査・薬剤感受性検査の結果のサーベイランス(厚生労働省JANIS検査部門)データと、薬剤耐性菌による感染症発症患者のサーベイランス(厚生労働省JANIS全入院患者部門)データ、各医療機関が厚生労働省に提出している全医療行為歴と患者の臨床情報・予後(DPC)データ、の3種類のデータを統合するプログラムの開発を一段落させた。このプログラムを、倫理審査を経て、約1000床の大学病院の2016年から2021年のデータに適用した。そして、まず黄色ブドウ球菌に着目し、耐性菌(MRSA)と感性菌(MSSA)による感染症発症患者を248名ずつ、菌の分離された検査材料と感染の種類まで考慮してマッチさせたデータセットと、耐性菌(MRSA)の保菌者758名と感染症発症患者420名から成るデータセットを構築した。その解析により、入院中の死亡率には3つの群の間で有意差がない一方で、MRSA感染症発症群では、入院期間および医療費が、MSSA感染症発症群およびMRSA保菌群のどちらと比べても、有意に増加することを定量的に明らかにした。また、透析が、その関連の背景に一貫して検出される交絡因子であることも明らかにした。以上の結果を論文にまとめて国際誌Antimicrobial Resistance & Infection Controlに出版することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果を国際誌に発表することが出来た。順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の達成度を継続していけるよう、今後も日々努力する。
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Causes of Carryover |
今年度までは、研究協力機関が1大学病院であったため、研究費の使用が少なくて済んだ。次年度からは、研究対象を他の医療機関にも拡張するために、新たな費用が必要になる。
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